烏丸メヰ

犬人間の烏丸メヰのレビュー・感想・評価

犬人間(2022年製作の映画)
3.7
人里離れた広い家で丁寧な暮らしをするイケメン。
差し出した皿に寄ってきたのは、着ぐるみをまとい床を這う人影。
彼は“犬人間”を飼っているーー

冒頭がこれ、という何の引っ張りもない導入に、奇妙全振りの清々しさと不気味さに引き込まれる。
『世にも奇妙な物語』の名作「ゴリラ」以降“着ぐるみ”が怖く、“着ぐるみもの”を愛してやまない私にとって「未体験ゾーンの映画たち2024」ラインナップ発表時点からかなり期待度の高かった作品。

奇抜な設定、それを日常としてこなすイケメン男性の生活をナチュラルに描く画面の温度感にはいっそ爽やかな透明感すらあり、異常性に対し白々しいまでのさっぱりした絵づくりは童話のようでめちゃくちゃ好み。

しかし、“設定勝ち”な世界を描いていく中でも奇抜さ異常さだけに表現を割かず、たとえばマッチングアプリの待ち合わせに
「正装して時間前に来る人物」
「ロンTジャージで遅刻して来る人物」
といった、一瞬でパーソナリティを描ききる人物造形も丁寧(かつ奇妙な主題を主軸に据え続ける為、ずるずる人物描写に時間を使わない観やすさも良い)。
“犬人間”の、あくまでも着ぐるみ(中が成人男性なの丸分かり)、でもキモさのないギリギリの造形のセンスも◎。

起承転結全てが面白く、一貫した不気味さ奇抜さで走りきる、映画として誠実で楽しくて良い作品。
私なら原題を訳してかつ気味悪く『よしよし』とかにするところだが、この破壊力ある火の玉ストレートな邦題に惹かれてか、平日にしてはかなり人入ってたな!
こういった映画との出逢いこそ映画祭「未体験ゾーンの映画たち」の醍醐味!!帰宅し犬人間人形を自作しました。
烏丸メヰ

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