きっこ

マン・オン・ワイヤーのきっこのレビュー・感想・評価

マン・オン・ワイヤー(2008年製作の映画)
3.2
 そらを歩くもの


おもしろい(≒興味深い)一作でした。
当時の再現シーンと実際の映像、そして、関わった人たちのインタビューがうまく混じりこんだドキュメンタリーちっくな仕上がりの印象。
彼のためのタワー。
今はもう無くなってしまった、当時の世界一高い人工物。

今回の映画公開で、彼は日本のインタビュアーにこう答えています。
「美しいパフォーマンスは、詩。
空中を歩く綱渡り自体とても詩的だけれど、
周囲の環境とうまく溶けあえば、奇跡のような美しさを帯びる。
問題は高さではないし、そんなことで競い合う人生はばからしい。
僕が望むのは、人々にひらめきを与えること」

 綱渡りをやめたら人生も終わりだという。
「一番怖いのは怖がるようになること。
でも、高所に張った縄の上より、地上のほうが余程たくさん恐怖があるのではないでしょうか」
〈読売オンラインより抜粋〉

反骨精神と、自由を求めて。
けれど、その自由が彼を縛っているようにも感じたのは私だけでしょうか。
夢が終わり、そこが愛の終着点であった。でも、それで良かったと思うと作中で語られています。
多分、そうなのでしょう。
ただ、私には他人事ながら、どうしようもなく切なくなってしまいました。

最後に。
空中で、彼がお辞儀をする姿と、笑顔がとても印象深い。
ドキュメンタリー作品はちょっぴり苦手‥な方もこの不思議な作品は大丈夫じゃないかと思います。
ごらんあれ!
(映画生活投稿分2009)
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