HAYATO

碁盤斬りのHAYATOのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
4.2
2024年186本目
囲碁のルールを覚えたい。
『ミッドナイトスワン』の草彅剛が4年ぶりの映画主演!
古典落語の演目『柳田格之進』をベースに、あらぬ嫌疑をかけられ藩を離れた浪人が、亡き妻と娘のために武士の誇りをかけた復讐に臨む様を描く本格時代劇
謂れのない嫌疑を理由に藩を離れた浪人の柳田格之進は、娘のお絹と慎ましく暮らしていた。実直な格之進は、かねて嗜む囲碁にもその人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心がけている。ある日、冤罪事件の真相を知らされた格之進とお絹は復讐を決意。お絹は仇討ちのため、自らが犠牲になる道を選ぶが……。
『Gメン』の加藤正人が脚本を執筆し、『虎狼の血』の白石和彌が監督。白石和彌監督にとってはこれが念願の初時代劇。江戸時代の室内照明は蝋燭や行灯なので、限られた光源で現代劇とは違う工夫を施したという白石和彌監督の演出は本作の見どころの1つ。
共演は、『青春18×2 君へと続く道』の清原果耶、中川大志、奥野瑛太、音尾琢真、市村正親、斎藤工、小泉今日子ら豪華キャスト。それぞれに見せ場があるナイスキャスティング。
想像以上に囲碁のシーンが多く、囲碁に詳しい人でもそうでない人でも、囲碁という競技の魅力を存分に味わうことができる。自分は囲碁のルールを全く知らないけど、俳優陣、特に草彅剛さんの碁を打つ姿は非常に美しく、アップで映した盤面と指先からは囲碁戦の緊張感がとても伝わってきたし、静寂な映画館だからこそ碁を打つ音の響きが心地よかった。エキストラに混ざってプロの棋士の方が数名出演されているそうなので、囲碁好きな方はそういうところも楽しめるのではないかな。
ストーリーは疑心と陰謀渦巻く復讐劇。格之進は見習うのも憚れるくらいまっすぐなお方。盗みの疑いをかけられて切腹しようとするのは現代人からすると理解し難い感覚だが、清廉潔白な武士としての誇りを胸に生きる彼はシンプルにかっこいい。そんな彼の生き様、姿勢が他者に影響を与えるのが印象的で、國村隼さん扮する源兵衛が最初はケチ臭い奴だったのに格之進と親しくなるにつれ、人として成長していく展開は実に微笑ましかった。
冤罪事件の真相を知り、復讐を誓うパートに入ってからは、格之進の見た目がガラッと変わるのだが、鬼気迫る草彅剛さんの表情と醸し出す雰囲気はお見事。
そして終盤、柴田が刀を抜いたことで唐突に始まる殺陣。その一連のシーンは、囲碁のシーンが多いからこそ静と動の緩急が効いて迫力ある場面に仕上がっていた。
実直に生きてきた男が、実直故に疎まれるというのはなんとも気の毒な話だが、自身のそれまでの行いを顧みる強さを持ち合わせているのも格之進の魅力であった。
HAYATO

HAYATO