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碁盤斬りのIDEAお休み中のレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
4.3
『斬るべきは敵ではなく己の"べき論"』

父と娘の復讐劇として、また、本格派の時代劇として非常に見応えあり。
主人公柳田格之進演ずる草彅剛の柔和な笑みから激情の怒りまでの振り幅は凄まじく、その娘清原果耶の凛とした佇まいにはハッとさせられる。
映像から滲み出る江戸の空気感と実力派俳優陣による今作は傑出した一本である。

ちなみに、敵役斎藤工との殺陣はもちろん良かったのだが、私はその復讐劇よりも、清廉潔白であるべきと固く信ずる柳田格之進と碁仲間の商人である萬屋源兵衛(國村隼)の考え方の変化の仕方に興味を持った。


注)以下、若干のネタバレ含みます。



格之進の正々堂々とした正直な碁の打ち筋を見て、これまでの客の足元を見るような商いの仕方を改め、嘘偽りのない商いをする商人へと柔軟に変化を遂げた源兵衛に対し、格之進は終盤まで清廉潔白であるべし!という考えを曲げない。それはもちろん美徳であるが、正しすぎる行いが誰かの息を詰まらせ、さらには破滅にも追い込む可能性に気付かねばならない。

ラストカット、復讐よりも強い呪縛である"べき論"に縛られ続けた格之進が遂に解放されたと信じたい。
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