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碁盤斬りのmatchypotterのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
4.3
久しぶりのツヨポン。
新しい地図とキノフィルムズ、ここ最近関係性が近い。

今回もその座組。
そして、監督は『孤狼の血』の白石和彌監督。
観たいと思っていたら公開初秋の週末の興行もよく、評価も良い。
となったら、そりゃ観に行くしかないっしょ、と。

時代劇も久しぶりな気がする。
白石和彌監督、初めての時代劇。良かった。
『孤狼の血』の時も思ったけど、この怒りを超えた怒りと言うのか。
表現しようのない圧倒的で絶望的な感情を抱く人の表情、言動。圧巻。

ツヨポン、演技派。
個人的に『任侠ヘルパー』が大好きで、彼のドスの効いた“怒り”系が好き。

白石監督にしろ、ツヨポンにしろ、その個人的に観たいところを存分に観せてくれた。素晴らしい時代劇。

柳田格之進、元々は彦根藩の藩士だったが、“とある嫌疑”がかかったことで脱藩し、妻にも先立たれ、娘と江戸の吉原近くの長屋で貧乏暮らし。

この娘、清原果耶も良い。
絵に描いたような“気立てが良くてよく気付く健気な娘”。
誰しもがこんな娘がいたらと思うだろう素敵な娘。

柳田格之進は囲碁を嗜む。
性格が滲み出るような嘘偽りのない真っ直ぐな打ち手。

その打ち手に惚れ込んだ町のケチケチ商人の源兵衛と無二の“囲碁仲間”に。
源兵衛、國村隼。もう、この手の役、ハマり役過ぎる。
その息子、弥吉、中川大志とのこの親子、すごく良い。

中川大志、いつの間にかとても良い雰囲気の役者さんになったな。カッコいいんだけど、彼なりの独特のリズムというか雰囲気があってとても魅力的。

彼らとそうこうしている内に、少しずつ関係ができて人生が楽しく、、、とはいかず、、、全くいかず。
柳田格之進の“とある嫌疑”の真相が突如として判明し、さらには妻の死の真実も聞かされる。

ここから、柳田格之進、ツヨポンの真髄。
そして、白石和彌監督の真髄でもある。

常に“清廉潔白”でありたいと願ってもあらぬ疑いを着させられた柳田格之進の、ここに来ての積もりに積もった積年の恨みの矛先がわかる。

まさに、怒り心頭の柳田格之進。
“本懐”への道が幕を開ける。

しかし話はそれだけに留まらず。
まさかの無二の“囲碁仲間”となったはずの源兵衛と弥吉親子とも、、、。

武士の本懐、武士の性分。この時代に生きる侍に宿る精神がここに。

貧乏長屋暮らしの侍であっても、“人に後ろ指刺されるようなこと”をした覚えも、そんな生き方をした覚えもない、ただただ武士の魂の名の下に真面目に真っ直ぐに生きてきた1人の侍に。

そんな侍に降りかかる“謂れのない嫌疑”。
現代ならば、「まぁまぁ、そこは許してやれよ」とか「そのぐらいで勘弁してやれよ」とか「代わりにこれで補償するよ」とか。

この時代に、いや、彼に、そんな選択肢はない。
落とし前を自分で、直接、必ず、果たす。何があっても。
納得できようが、できまいが、やれることは全てやり切る。

逆に言えばそれがやり切れる世界。
そこに生きる彼らの生き様、武士の本懐。

柳田格之進が体現するその怒涛の生き様。
こんな生き様、性格だからこそ、よく思われない事もあるかもしれないが、だからと言って調子よく曲げれながら生きれば、それは武士道ではない。

久しぶりにシビアで、生々しく、タフで、ドストレートに剥き出しな“侍魂”と、侍の生き様を見た。

すごく重みがあって見応えあって良かった。
一切中だるみもせず、常に彼と彼を取り巻く環境に変化があるし、前半がしっかり後半を活かす展開。

今年の邦画でかなり上位作品になりそうな予感。
『任侠ヘルパー』ファンにとっても大満足。

※24年3月、映画オススメブログ、始めました。
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