コマミー

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのコマミーのレビュー・感想・評価

3.9
【死者と手で繋がる】




"オーストラリア"のみならず、世界的に有名な"YouTuber:RACKA RACKAことフィリポウ兄弟"。2013年にチャンネルを開設し、当時の流行りやアニメやアメコミなどをパロディした過激な動画が流行り、日本でも日本のクリエイターによって字幕付きの動画が作られたりした。
私は偶然にもフィリポウ兄弟の動画を知っていて、そんな彼らが大々的にホラー映画を作ると知った時、衝撃を走った。しかもアメリカではあの"A24"が配給し、全米でも大ヒットを果たした。1YouTuberが映画監督としても大成功を果たしたボー・バーナムやジョー・ペナと並ぶ素晴らしい例となったのだ。

呪術者の"手首"を精製したものを握り、「90秒憑依チャレンジ」なるものを遂行した若者たちが酷い目に遭う物語である。

ただ怖いだけのホラー映画ではなく、主人公"ミア"が亡き母への"喪失感"と向き合い、その"真相"までも明らかにする物語となっており、そして最後はなんとも言えない気まずさが残った作品となっていた。
若者の中でもミアはどんどんこの「90秒憑依チャレンジ」にのめり込んでいくのだが、これにもこの母の死に対する喪失感や疑念が繋がっていて、それゆえにこのチャレンジの"罠"にどんどんハマっていってしまう所が非常に怖かった。
ラストの結末はとても"残酷"だった。それに悲しかった。それにこのラストに繋がるまでのフィリポウ兄弟の話の繋げ方には本当に驚いた。やはり日々、YouTuberとして過激ながらも面白いコンテンツを作り続けている彼らだからこそ作り上げることのできた才能なのだなと感じた。

これは今時の若者の"ちょっとした事から始まる大きな失敗"のようなものを、"オカルトホラー"として表現した実に現代的な衝撃作である。後先を考えず、直感で動く多くのZ世代の姿を体現した作品だったから、本当に多くの人にウケ、大々的なヒットに繋がったのだなと感じた。
そして目の前で大変な事が起きても、助けるよりも"動画に収めて拡散する事を優先"する今時の人々らしい"人間の残酷さ"というものも描いていたりして、実に本作が"身近な事"に感じたのだ。

『若者の過ちてんこ盛り映画』が本作なのである。

それをホラー映画としてスピーディーで面白く作り上げるだなんて、本当にフィリポウ兄弟は天才だし、実に刺激的な瞬間であった。

これからもYouTuberとしては勿論、映画監督としても注目すべき2人だなと感じた。
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