ユウト

12日の殺人のユウトのネタバレレビュー・内容・結末

12日の殺人(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

仏警察が捜査する殺人事件は年間800件以上。
そのうち未解決事件は約20%。
これはそのうちの1件だ。
と始まる本作は原作がノンフィクションだと知らず、
てっきり女子大生の焼身殺人事件を追う推理モノだと思っていたが、どうやら違う。
事件が迷宮入りする謎が観たかったのに、本作が描きたかったのは違う。

冒頭に円形トラックを自転車で疾走する男。
事件を追う刑事。その苦悩。

(未解決事件約20%の内訳を調べたくなったが私の能力ではインターネット上ですぐには判らず。
本作の舞台は地方都市とのことだが、2010年代後半フランスは20%も未解決事件があるのに防犯カメラやドライブレコーダーも無縁なほど、牧歌的なのだろうか。

『女の子だから殺された』というセリフはジェンダーロールの呪縛だろうか。
男はヤリ◯ンでも殺されず女は淫乱だといけないという呪縛? 
おフランスにもそんな古風な考えが2010年代女子大生にあるの?
そのくせ判事は中年女性で『男と女の溝』から公平な視点を提案する流れ。)

それでも事件が解決しない。

問題提起なのか欲求の主張ばかりで何を描きたいの?
本作冒頭で被害者のなまえを言って犯人は火をつけた。
その事実は被害者と犯人しか知らない事なのでノンフィクションでもわかり得ない。
映画脚本がそう設定したのは無差別殺人(通り魔事件)ではなく顔見知りの犯行。
そうしたのなら映画として結論をハッキリしてほしい。
(近頃のおフランス映画は『落下の解剖学』といいハッキリさせない『はぐらかし映画』が評価される風潮なのか。
観ながらアレコレ文句ばかり自分に増えていった。)

終盤まではぐらかす演出に、一応モヤモヤしながらも惹きつけられはした。
円形トラックを周るだけの男は同僚の刑事の助言を聞き、
自然の中を走れるようになった。
登り坂。
その顔は微笑みにも見えるが安堵や開放には見られない。
映画の画面(フレーム)は彼を正面から捉えて終わる。
彼を開放しない。
彼をフレームから開放させないのだ。
苦悩や哀しみから開放させない。
犯人は野放しのまま。
ユウト

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