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片思い世界のmasayaのレビュー・感想・評価

片思い世界(2025年製作の映画)
4.1
拾われないぬいぐるみに開かないドア。序盤の小さな違和感の積み重ねが全て仕掛けだって気付いた時、そこにあるのは、誰もがあれば良いのにって願う世界。3人の女性の生き生きとした姿と相まって、観る者にとっての誰かを思う時間に確かな質量を与えてくれる、救済のような映画だ。

観る前は謎だったタイトルの理由が明らかになる過程が鮮やか。基本的にはこの着想(ミスリード)一本勝負ではあるのだけど、親密な3人の関係性で豊かに肉付けした上で、彼女たちから思う相手への眼差しに焦点を合わせる脚本の巧みさ。ハッピーサッドな終わり方が余韻を残す。

ある程度の年齢から社会と隔絶された時に人間的に成長出来るのかっていう狼少女の実験のようでもあった。彼女たちは3人の小社会を作り、画面の投影のような大社会と対峙することでそれを成し得た。
それは劇中で彼女たちが観た映画に出てくるものであったり、彼女たちとは違う理由で社会から隔離された人物と意図的に対比される。

細かいことを言えば、メインストーリーからこぼれ落ちた途端に存在が無くなったかのようになる人たちが居たり(ラジオの男性、デートの女性)、世界そのものが夢の中のような歪な描かれ方ではあったな。
思考実験的な部分が強いというか「坂元裕二さんが子供の頃不安な夜に想像した世界」を実写・豪華キャストで実現させたものとしてみれば、飛躍や尻切れトンボも理解出来るだろうか。
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