各話の関係性が希薄で、伏線が回収されないオムニバス。
なぜスコア1.1のレビューをこんなに書いてしまったのだろう。ただ、このような、どういった経緯で撮られたのか掴みづらい映画が嫌いになれない。公式Twitterのほか、Youtubeには予告動画まである。
なんとこの話、アマプラの概要欄にコトの顛末が書いてある。ネタバレもクソもないのである。
冒頭の「これは視聴者からの投稿映像である…」的な演出だが、これ見よがしにUSBやSDカード等の比較的新しめな記録媒体がわざとらしく、ただどことなく整然と散置されており、その時点でかなり興醒めする。往年の、"暗い台の上に置いてある1本のビデオテープにスポットライト"の方が大分マシである。
■恐怖の種類
ホラーではない。怖くない。
【あらすじ】
某映像制作会社に送られてきた、送り主も日付もバラバラの映像を時系列順に編集した動画。
バラバラの映像というだけあって、カスみたいなYoutuber達がオムニバス形式で不幸?になる。
[EP.1]
内見に来た事故物件に一泊するというYoutuber。その辺の若者だけどちょっと目がキマってる。というか内見で一泊とか無理だろ。何も起こらないのだが、何か起こりそうでちょっと期待させられて悔しい。
事故物件に飽き足らず、山梨の廃村探訪に向かうYoutuber。カメラマンが発言しない演出の理由付けかと思うが、「撮影者は以前に逃げたペナルティで発言禁止」という、Youtubeの企画としてはつまらない発想が展開される。絶対2人で話した方が色々と広がるだろ。結局EPの最後の方に口を開くけど、何故かアフレコで微妙な気持ちになる。
Youtuberが廃村で見つけた人形を持ち帰ろうとすると、山道から不審な女がこちらにゆっくりと近づいてくる。急いで車に乗り込んで帰路に就くがその途中、この女がトンネルの前にいつの間にか居るというありきたりな展開を迎えて終わる。山道からディテールが分からない程度の大きさ(性別も見分けづらい)で不意に登場する演出は結構イケているが、トンネル前ではガッツリ映ってしまった。惜しい。自室と思われる場所で語られた後日談によると、人形は紛失したとのこと。
先ほどまでのカメラマンがメインアクターになる。「勝手に合鍵をコピーして作っちゃいました!」住居侵入罪です。入った部屋はEP.2までのYoutuberの居室。電気は点いていないが、お湯を入れる前のカップ麺など、居住者が突如として消えたような様相を呈している。おどけた様子で警察に届け出を出す旨を報告し、撮影を終える。
[EP. 2]
どこかの村(恐らくEP1でYoutuberが訪れた村だが、言及はない)で霊能者が除霊をする企画のビデオを再生しているブラウン管テレビから始まる。場所はあるオカルトショップで、男性が店主に取材をしている。店主は自身を鍛錬を積んだ霊能者であるといい、店の盛衰や自身の経歴について時代背景を交えながら淡々と語るが、ここはなんとなく良さを感じる。こういう場面で登場する老人は耄碌していることが多いが、この御仁は壮健に見える。途中、スタッフが店主にEP.1のYoutuber動画を見せるシーンがある。取材中にスタッフが店主の名前を間違えるが、謝らないのが少し不快。この後も何かと撮影スタッフが店主に対して失礼な態度をとる。撮影アングルもクソ邪魔そう。
取材後に除霊の依頼に向かうと言う店主に同行するスタッフ。車窓から、不審な女が横切るが誰もそれに触れない。こういった、見えているが見えていないか定かではないが、「誰も触れない」系の演出は嫌いじゃない。店主は依頼の家で除霊を始めるが、当の家主も店主を蔑ろにする感じで、一連の執り行いに真剣みがない。
最後は、報酬を検めるところを撮られた店主がスタッフに激昂し終わる。店主が周囲の人間になんとなく失礼な態度を終始とられ続ける演出と併せた笑いどころだろうか。
[EP. 3]
女性Youtuberが単身で動画の導入を撮影しているシーンから始まる。Ep1と同じく、不気味な事件や事故を調べるという趣旨のよう。不慣れなようで何度も撮り直している上、口下手で話が入ってこない。演技じみていている様子も相まって独特のウザさを醸し出すことに成功している。脈絡のない森の中を撮影する途中、奇怪な動きをする女性に出会う。恐らくEp.1から出てきている人物と思われるが、髪の辺りのクロマキー?が雑でザリザリ合成になっている。意外な効果。その後、不必要にカメラをパンした後、突如として背後に現れた女に首を絞められ"そう"になる。というのも、次にカメラを回し始めるのはYoutuberではない誰かであり、倒れているYoutuberの横にカメラをそっと置いて消える(優しい)のだが、このときYoutuberの首には索条痕がまったく無い。当の不審な女はガッツリ人間なのだが、これは寧ろ良かったと思う。人間の方が怖いし。
Youtuberは何事もなかったかのように起き上がるのだが、帰りたいと泣き出す始末。だれも止めないから帰りな。
[EP. 4]
EP.1で登場したYoutuberが行方不明になっており、同行していたカメラマンが電柱に掲載された尋ね人の掲示に落書きをし始める。
EP.2の取材スタッフが登場。霊能者の家を訪ねるが、様子がおかしくなっていた。送られてきた人形を握りしめ、悪霊と戦うとかなんとか言い残して、スタッフ達を門前払いする。後日、亡くなったとのこと。負けたらしい。
EP.3の女性Youtuberが自宅と思われる場所に登場。スケッチブックに例の不審な女の似顔絵?を書いて笑っている。
初登場の男性、何かしらの記録媒体をリュックに詰めて外出するが、出先で何者かにトンカチで襲撃される様子が防犯カメラ風の映像に映る。男性の部屋のホワイトボードには、これまでのEPに登場した人物たちがスタッフであるかのように記されており、この映像が何かしらの企画モノであったことを匂わせている。最後に、デスクの上の人形を映して終わり。
【総評】
サメ映画にはない「惜しさ」がある分、更につまらなく感じる。
各EPの共通点は間違いなく村だが、各EPに登場する村が同一であるという言及はない。更に、(恐らく作用していると思われる)呪いや人形の因果や実態はまるで描かれない。各EPの人物は一度も鉢合わせることなく、フワっとした結末を迎える。EP.1のYoutuberが失踪した理由も、EP.2の霊能者に人形が送られてきた理由も、EP.3のYoutuberの様子がおかしい理由も回収されない。EP.2に至っては途中の除霊のくだりは必要性を感じない。『放送禁止』のように、そこはかとなく漂わせる不気味さを演出したかった雰囲気は感じ取れるのだが、各エピソードが薄味も薄味な上にツナギになる要素が無く空中分解している。