タクマ

窓ぎわのトットちゃんのタクマのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.7
見たで。
黒柳徹子さんの子供時代を描いた話とは聞いた事があるけど内容まではしっかり知らなかった本作。予告編を見た時点では正直配信やレンタルスルーで良いかなって思ってたけどフィルマでもXでも絶賛の嵐でその内容に惹かれる形で映画館に見に行きました。結果は今年ベスト級。なんで?とかどこが?とか聞かれたら具体的に言語化するのは難しいけど理屈抜きにただただ大好きですって言える映画。
冒頭からトットちゃんの子供らしい無邪気さが溢れたエネルギーにしっかり心は掴まれるしトットちゃんだけじゃなくその周りにいる人も町の姿も背景もアニメーションが生み出せる生気でいっぱいで時代や年代が違ってもこういう子供時代があった事は同じなんやなあって思うのはこれをみた大人達全員が思うんじゃないでしょうか?
そんな子供からみた幸せな情景に心を掴まれるからこそそれが戦争の足音により静かに崩れ去る展開にじわじわとした恐怖と絶望がわいてくる。純粋に生きている子供には理解できずともそこにも容赦なく襲い来る戦争の影響と当時の全体主義の劣悪さが物語に厚みがあるリアリティーを生むんです。
そういう戦争が奪ってしまう物の現実を描きながらもそれ以上に注目してしまうのはやっぱり小林先生とトモエ学園の存在ですね。多様性っていう言葉すらなく今の時代以上に社会が作った当たり前っていう枠に入る事を強制されてしまう時代であんなに子供達一人一人を尊重した場所があった事に驚くしそういう理想を本気になって目指した小林先生の子供達に対する愛情の強さには屈服するしかない。大人の子供に対する向き合い方を学ばせてくれる映画でもある様で社会全体が生み出す流れのせいで自分自身の生き方を見失ったりそれで生き辛さを感じてしまう人が多い今の時代にも通じる部分はたくさんあるからこそ小林先生の言葉の一つ一つと悲しみや絶望も越えるトットちゃんの強さに救われる人も多いんじゃないでしょうか。
見終わった後に自分の周りのお客さん達を見てみたら子供さんやお孫さんを連れてきてる人達もたくさんいてその人達が本作を今のお子さん達に見せたかった理由は自分にも凄く感じる事ができましたし反戦と言うテーマはもちろん今の時代にも大切なメッセージがたくさん込められた映画でした。小林先生やトモエ学園の事をもっともっと知りたくなった。原作本読んでみようかなあ。
「追記」自分の中で今年のベスト3は殆ど決まっていてこのタイミングで今年のベストなんてそんな簡単にひっくり返らんやろって思ってたけど今年はもう窓ぎわのトットちゃんがベストで良いわって思い始めてる。自分にはそれくらいぶっ刺さりな作品になりました。これは後々に何度も見返したり応援したりするやろうし私の映画人生で大切な1本になりそうです。こういう作品に出会えるのは映画好き冥利に尽きるし心の底から嬉しく思う。
この作品をどんな言葉で語って良いかまだわからないが劇場観賞でしか味わえない感動は確かにあると僕の心は叫んでいる。
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