アニメーション・背景美術・物語いずれも質が高い、一級のアニメ作品。
どこへ行っても「問題」を起こし、転校を繰り返していた「トットちゃん」こと黒柳徹子氏の幼少期。
そんなトットちゃんがたどり着いた風変わりな学校「トモエ学園」での日々を描く。
子どもたちが何ものにも抑圧されず、伸び伸びと育ちゆくさまをひたすら直球・丁寧に描ききる本作は、直球だからこそむしろ斬新さを覚える。
たとえば、子どもたちが性的対象として描かれず、ジェンダーにかかわらずただただ子どもとして愛らしく描かれること。
たとえば、小児麻痺などの障碍のある子どもが当たり前のように日常風景の中にいること。
トットちゃんと級友たちとの生活がベースでありながら、途中、ドイツから亡命してきた指揮者のエピソードなども描かれ、反戦・反権力の物語としても満足できるつくりになっている。
アニメーション作品としても非常によくできており、『この世界の片隅に』や『若おかみは小学生!』などに胸を打たれた人にはぜひともオススメしたい。
日常芝居の作画や背景美術のつくりが極めて丁寧かつ美麗という点で、両作品と共通している。
……と、いちアニメファンとして褒めで終わりたいのはヤマヤマなのだが、すばらしい作品だからこそ気になる面も。
『アンクル・トムズ・ケビン』を反権力を象徴する小道具として登場させながらも、「抑圧され、耐え忍ぶ日本の市民」という目線でしか「戦争」を描かないという点は、他のほとんどの日本作品と同様、残念と言わざるをえない。
アメリカの奴隷制になぞらえて語るならば、中国や韓国に対し植民地支配を行っていた日本は、黒人奴隷どころか明確に白人の奴隷主の側である。
黒柳氏の自伝的作品であることを差し引いても、すこしでも上記のような視点を考慮できなかったのかと思った。