やぎ

窓ぎわのトットちゃんのやぎのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
3.6
『窓ぎわのトットちゃん』すごく良かった🐐
原作未読勢の感想です。
レトロな絵で描かれるキュートなキャラクター表現や、ファンタジックなアニメーションが目立つ一方で、戦争や死の影が日々の中でチラつく描写の入れ方が巧み。日常が死と紙一重になってくる時代の移ろいを見事に表現していると思う。

いちばん好きなシーンは、友人と死別したトットちゃんが、友人と別れを告げた後に、街中を駆け回るシーン。そこではトットちゃんは人々の生活の多様な現実を目撃することになるのだが、そのスピード感と編集の的確さに舌をまいた。いきなり映画のギアが上がる瞬間。

他にも好きなシーンがある。それは大人が泣くところ。特に小林校長と泰明の母が泣くところは、その表情を観客に見せず、身体を震わせるのみだが、その共通性と、抑制された演出に沁みた。動画枚数12万枚という迫力とは別の、繊細な迫力というべきものがそこかしこに観られたのもグっときた点。

しかし小林校長が実践していたリトミック教育っていうのはスゴいなと思うけど、教育の世界ではああいう方法論はどう評価されてるんだろうかね。あれは方法論がスゴいのか、小林校長がスゴいのかちょっとわからないところもある。学園が焼け落ちるときの小林校長から感じた狂気の演出も良かったよね。
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