アニメーションは美麗で、トットちゃんの目から観た当時の日本を見事に描き切っている。綺麗なだけでなく、表現も豊か。自由な発想のトットちゃんの空想などを見事に映像で表現している。
この絵を見るだけでも価値があるが、ストーリーやテーマも素晴らしく気概がある。
トットちゃんの天真爛漫さが存分に発揮される前半のパートは煌びやかで楽しさに溢れている。友達の泰明ちゃんや、トットちゃんを見守る両親や小林先生など魅力的な人物だ。しかし、時代背景は太平洋戦争に突き進む日本。徐々に不穏な雰囲気が、画面に満ちてくる。この周りの変化の描写が劇中で説明がないが、そこが自然で素晴らしい表現だし、反戦としてもクール。
変化していく時世の中でも、トットちゃんは真っ直ぐ成長していく。トットちゃんに関わる大人たちも立派だ。酷い時世でも芯がしっかりしていれば、個人は決して負けはしないと静かに謳っている映画だ。