バカ塗りというのは、津軽塗のことなんですね。全然知りませんでした。
津軽塗はすごく長持ちする(メンテナンスもできる)と、以前聞いたことがあったのですが、それはあんな果てしない工程を経て仕上がるからなんですね…。
そして余計な音楽やセリフを使わずに、ただ静かに黙々と作業する工程が映し出された画面には、凛とした作業場の空気だけ。津軽塗への誠意が感じられる素敵な時間でした。
物語としては家族の絆。
口下手な父と娘、父親とは噛み合わなくて家を出たけど、2人が心配なのかちょくちょく顔を出す兄。そして老人ホームにいる祖父。
お隣のおばちゃんも、ほぼ家族みたいなものだけど、離婚した母親は家族として描かれていなかった。
「出来るわけない」
離婚した母親と父親がそれぞれ美也子に言うんだけど、同じセリフなのに意味がまるで違うんですよね。
母親は、久しぶり会っても娘の話を親身に聞くわけでもなく、同級生と比較し、娘がやりたいことを告げても「出来るわけない」と切り捨てる。
あの母親の「後悔してからじゃ遅いの」は、まるで家族だった頃を全否定してるように聞こえた。娘がどんな気持ちでそれをやりたいと言ってるかなんて考えもしないのだろう。ピアノのエピソードもそう。
あの母親に育てられたら、何も出来ない子になってしまう。
一方父親は、自分が祖父のように才能がなくて努力して努力して苦労したからこそ、自分と同じ思いをしてまで、どうなるか分からない仕事に就くことを、将来を心配しての「出来るわけない」だった。
だから美也子が本気だと分かってからは、もう言わなかったし、同じ言葉でも、全然意味が違う。
この対比は刺さりましたね。
お兄ちゃんも、家業を継ぐ継がないでギクシャクしてたけど、家族への愛情はとても感じるし、おじいちゃんの箸は一緒に泣いちゃいました🥺
面白いかと言われると、ほんとに静かでゆっくりとした作品なので、好みは分かれると思いますが、私はとても好きでした。