犯人探しのミステリーではないし、石原さとみが主役というわけではない。何も起きない辛さ。折り合いのつかない喪失感、吐き出せない憤りにどう向き合っていけばいいのかを描いた群像劇。
ヒメアノ〜ルや空白の印象が強い吉田監督作品だったので期待していたものの、眼を背けたくなるようなグロいシーンもなく、吉田監督っぽくない映画だった。
これはおそらく石原さとみをヒロインに据えたせいだろう。体当たりの演技は確かに凄かった。でも上手いとは思わなかった。逆に周りを取り巻く馴染み薄い役者の演技力が際立った。その証拠に例えば、旦那さんを上手い役者でなく、いい旦那だなあ、と役を感じて観られてた。
石原さとみには今後もエールを贈りたいけれど、吉田監督が次作で使うことはないだろう。もっとコントロールできるヒロインだともっと違ってたかもしれない。なにしろ石鹸で洗って髪を傷ませたとか、すっぴんボロボロで、とか言われてたけれど、清潔感溢れて普通に劇中いちばんチャーミングだった。
吉田監督のグロさが苦手な人ならお薦めできるけれど、前作までを期待してると物足りない。
石原さとみと前作のベテラン役者陣、古田新太、寺島しのぶ、松坂桃李、と並べられたら仕方ない。
虹の光が壁に映る演出は良かった。
次作にも期待。石原さとみも。