気の利いたパス

ミッシングの気の利いたパスのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

森優作と青木崇高に泣かされそうになりつつも、吉田恵輔監督らしさ全開の、観ているこちらの調子を狂わしてくるひねた笑い(カーラジオ最高!)に、石原さとみの過剰さ(いろいろあるけど着用しているTシャツのメッセージ!)が相まって、この作品は喜劇だとすら思いました。

本当に伝えたいことがある人たちは、印刷物という旧世代の手法を使って、マチで声を上げる。
それを伝える側のメディアは、カメラとマイクを使い、原稿とキャスターを通してテレビに流す。
受けとる側の大多数は、スマホとインターネットという最新技術を使って、SNSや動画サイトという新しく出来た場に、糞を垂れ流す。

少し前までは、親しくない人、それほど知らない人へ苦言や暴言を吐く場合、せめて聞こえないように言う。本人には届かないように言って、憂さを晴らしてたはずだったんですよね。そこには僅かばかりの配慮があったはず。
森優作と中村倫也をオーバーラップさせるあのガラス越しの演出、二重の意味で恐さを感じましたし、吉田恵輔映画のこの辺の意地悪さが最高です。

いったい全体、技術の発展とは、果たして我々を善くしているのか。
正義の側に立っていることを確信した直情的な己の行為は、果たしてなにかの為になっているのか。
どんどんと薄く広くなり、本質を見失っているようにも見えるそれは、何を生んでいるのか。

蒲郡のホテルスタッフ、身重の元ヤン、印刷屋の旦那、居酒屋でのカトウシンスケ、漁業組合の連中、そしてラスト。
作中で描かれる優しさのようなものは、全て同じ空間で、人から人、手から手、目と目。濃くて近くてとても身体的です。
真剣に何かを訴えて、人の為に行動する。時に大声を出して、涙を流して、大笑いをする。それって恥ずかしいことなのか。

森下美羽ちゃんは行方不明になっていない。当たり前ですが、これは映画の中のお話。
映画という装置を存分に使った、フィクションならではの素敵な嘘を楽しんだ2時間。

パンフは1,200円という価格通り、出演者インタビューと監督インタビューに、吉田組ドキュメントやシナリオの決定稿も収録されている充実の内容。
ただ、第三者の記事がSYOさんの1本だけってのは寂しい。

映画の感想を残すことをだいぶサボってしまった。
観てはいるんですが…
短く書き残すことを主眼に、細々とでも続けていかねばならぬ。
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