「そもそもは辛いことや耐えられないことがあったときに、人はいかに折り合いをつけるのか、という話を作ろうと思ったんです。」
吉田恵輔はある意味「変態」だな。あの名作『空白』から生まれた作品ということだが、こんな「誰も見たくない」であろう悲しい話を撮りたいと思うんだから。(見ちゃったけどね)
本作はともかく「石原さとみ」！ 笑顔が似合う石原さとみに、笑顔が全くない。思い悩み、苦悩し、慟哭する石原さとみ。こんな石原さとみは見たことがない。相当な覚悟を持って挑んだ作品だろう。
もう一人の視点となる中村倫也も良い。テレビの報道マンとして、美羽ちゃん失踪事件を追うが、被害者に寄り添おうとしながらも、局側の意向との間に挟まれ苦悩する砂田という男を好演している。
そして「森優作」！ 最初から怪しい沙織里(石原さとみ)の弟役だが、この森優作の演技が不穏な空気を漂わせて、作品に疑心暗鬼を巻き起こす。
テレビの在り方、被害者を更に追い詰めるSNSなど、現代的なテーマも内包し、失踪した愛娘の帰りを待つ夫婦の葛藤を描いた問題作。
子を持つ親には本当に辛い内容だが、石原さとみの女優としての新境地は映画ファン必見だ。
＊山本直寛演じる中村倫也の後輩報道記者。地方局で政治家のスキャンダルをスクープし、ドキュメンタリー映画も撮って他局に移るって、五百旗頭さん？(笑)
