ちっちゃなきょゥじん

ミッシングのちっちゃなきょゥじんのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 石原さとみ(沙織里)に当て書きされた作品。なりふり構わず役に没頭する姿は注目に値するし、何らかの演技賞にも輝いても不思議はない。ただ、娘(美羽)が行方不明になった親の気持ちが分かるかと問われたら自信がない。自分も肉親が自死した際には、情緒がおかしかった。ただ、死が確定してしまった分、協力者やカンパを募って捜索したりビラを配ったりはしていない。僅かでも再会の希望が残る行方不明。探さない不作為に罪悪感が伴うと、残された家族を精神的にも時間的にも蝕み続けてしまうのだろう。そんな立場は経験していない自分には、沙織里のイラツキやSNSを観ずにいられない心境がリアルなものなのか判断がつかなかった。
 一方で、豊(青木崇高)の気持ちは分かる気がした。自信も娘が奪われて苦しんでいても、隣の妻が我を失ってしまうと自分は狂えない。娘も見つけたいが、妻も守らなければならない。自分が感涙したのも、豊が泣いた終盤のシーンだった。美羽探しで全く報われなかった夫婦が、2年後に娘が一時疾走(誘拐)した母から感謝される。娘がいなくなった親の気持ちは、やはり娘がいなくなった親にしか分からないのだろう。
 通学路の誘導員を始めた沙織里は落ち着きを取り戻す。自分が自死遺族になった時と同様に、時はゆっくりとだが着実に心を癒やしてしまう。大切な人を失った衝撃を押し流してしまう時間を残酷にも感じる。ただ、それでも人は生きていかなくてはならない。どんなに辛い現実に押しつぶされも、笑い会える穏やかな日々は訪れる。だからやはり、自死なんてしてはいけない。