ひよ子

ミッシングのひよ子のネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

重ねに重ねた希望と絶望だけでお腹いっぱいになる

主人公の沙織里は娘を探す必死さとストレスでかなり過激な母親として描かれており、その夫の豊はちょっと引いた形で沙織里を見ている

途中見ていて辛い場面が多く、感情をむき出しにする沙織里の姿にはうっとなるのだが、自分が子を産み育てる側になればきっと同じような思いになる、ということを思わされるくらいに真に迫る部分があった。石原さとみすごいよ

豊は沙織里ほど美羽の捜索に熱量を見せないように最初は描かれるが、蒲郡のホテルにビラを置いてもらうよう交渉したり、エゴサで苦しむ沙織里をみかね誹謗中傷と立ち向かったりなど、細かな描写で家族に対し愛情深い人物とわかるようになってゆく。2年後のもうひとりの失踪した子とそのお母さんに会った時の涙がハイライト

沙織里の弟であり、美羽失踪前まで一緒にいた圭吾のエピソードもなかなかに苦しい。彼は彼なりに姪を大切には思っていたが、自分が犯していた過ちが重なったことで失踪事件を歪めてしまう。事件の容疑者扱いされ、違法カジノがバレて仕事も追われ、姉夫婦には憎まれ、姪にも会えなくなる

自分の過去のトラウマも重なりより事態が混沌としていったのが圭吾のやるせない部分で、でもその結果少し姉と和解するきっかけも生まれた。皮肉な話


マスコミパートは地方局の報道部でバイトしていた身としてはツッコミどころも多かった。不破みたいなカメラマンがいてたまるか(虎舞竜は触れてはいけない、わかる世代なら皆思ったと思うけど)

砂田はずっとあのスタンスでやってきたのか、あるいは何かをきっかけにキー局に転職していったやつみたいなマインドをやめたのかはわからないけど、報道の力とは何なんだろうなと思わされる


ラストの壁の落書きにかかる虹
あれは私の中ではもう美羽はこの世にはいないと捉えてしまったのだけど、あの光に沙織里は希望をきっと見出したのだろう

夫婦は今日もどこかで娘を探している
同じように家族の帰りを待つ人たちが現実にいて、実際に報道がなされることがある
終わりがない、でもそれがよりこの物語をリアルに感じさせた
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