カッパロー

ミッシングのカッパローのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.4
不在に抗わんとして。

娘の失踪から数ヶ月。夫婦は娘に関する情報を得ようとビラを配り、何とか手がかりを得ようと四苦八苦する。帰らない娘、夫婦の溝、ネットでの誹謗中傷。彼らへの責任を果たそうとする地方局のディレクターは、ありのままの事実と苦しみを報道し助けになろうとするがーーー

素晴らしい。娘の不在それ自体ではなく、不在から波及する苦しみとそれを味わう異なる立場の人々を主題にしたことが見事。時間とともに忘却され不在が固定化されていくのに抗うということ、そしてそこに襲いかかる現実の魔の手がありありと描かれていた。

まず、主演の石原さとみの映りが異次元。憔悴、視野の狭窄。追い詰められた女性の演技として100点と言ってよいだろう。この映画を生み出した手持ちのカメラは、彼女に寄り添いながらも、その苦悩を遠慮なく暴き立てた。

とはいえ、彼女以外の機能、すなわちこの映画の群像劇としての側面にも注意しておきたい。報道の中立性を重んじるディレクター、彼女の味方であり続ける夫、不器用ながら罪を悔い喪失に嘆く叔父。彼らの誰か一人でも欠けていたら、この映画は凡庸であっただろう。



テレビに流れる悲しいニュースの裏に、必ずこういった人々が居ることを忘れちゃいけないよね。みんな、想像力を、持とう。これは自戒も込めて。
カッパロー

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