6歳の娘の失踪事件を、家族の視点とマスコミの視点の両面から描く 吉田恵輔 監督作品。
前々作『空白』から派生した物語とのことで、確かに似たようなテーマの作品だが、『空白』や『神は見返りを求める』でも感じた「あざとさ」は後退して、ぐっと出来の良い仕上がりになっている。
どのキャストも物語によく馴染んでいる。シーンの背後で動くサブキャラの細かな演出は、時に笑いを誘いながら、同時にリアリティと味わいを増すことに成功している。何より、砂田 (中村倫也) に代表されるマスコミに加えて、夫婦を支える市井の人々の描き方が、これまでに比べて格段に深みを増していると思う。
要所要所で効果的に使われる光を生かしたショットや、冒頭とラストで描かれるちょっとした仕草の演出、ほぼ無音のエンド・クレジットなど、撮影・音響含めとても丁寧に作られていることが感じられる。
多くのものを失いながら、最後の最後に幾つかのことを取り戻す (取り戻しつつある) 被害者家族を描いたラストがとても良い。主演 石原ひとみ の新たな (ひょっとすると初の?) 代表作と思う。