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ミッシングのtakaoriのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.3
2024年114本目
劇場43本目

同じく吉田恵輔監督の『空白』(こちらも大変な傑作で、劇場で泣いた)ととてもよく似たテイストの映画で、見終わった後に「みんなどうやって折り合いつけるんだろうな…」という古田新太のセリフが頭をよぎった。今作『ミッシング』はそれに比べるとややありきたりとも感じさせる設定と展開の映画ではあるが、主演の石原さとみの迫真の演技が大変に素晴らしいので、画面の中に引き込まれっぱなしの2時間であった。その分、鑑賞体験はなかなかシビアなので、気持ちに余裕があるときに見たほうがいいかもしれない。とても『シン・ゴジラ』でトンチキ英会話を披露していたのと同じ人とは思えないほど、役になりきってきて、本当に自分の子どもを失ったようにしか思えなかった。
ありきたりの展開とは言え、それは観客である我々が「子どもが行方不明」「子どもが事故で亡くなった」といった出来事の悲惨さを想像せず、日々のちょっとしたニュースとして消費してしまっていることの証左でもある。劇中で、おそらく水難事故で亡くなってしまった子どもの遺体とその両親の悲痛な叫びが描かれるが、どんなに「ありきたりのニュース」であってもそれを経験する当事者にとっては人生が一変するような重大事である。「わたしたちは人の心をなくしてしまったのか?」というキャッチコピーは、劇中でネットに誹謗中傷を書き込む匿名の悪人たちだけではなく、この映画を「ありがちな話」と見てしまう観客にも向けられているのだろう。
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