こーよー

ミッシングのこーよーのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.7
とてつもない傑作。

まず吉田恵輔監督は今日本で最も優れた映画監督で間違いない
ここ最近の映画全部傑作だし突きつけてくる重さが尋常じゃない
これこそ見る前の状態に戻れないっていう映画、韓国のイチャンドンとかポンジュノと同じレベルまできてるとさえ思う

いろいろディテールを語ったり思い出すとキリがない

今回は娘が誘拐された家族視点がメインで語られていくけど事件とか予告でも打ち出してるSNSとかメディアの愚かさとか危険性、胸糞悪さっていうのはテーマでは無いと思う(めちゃくちゃ描かれてはいるけど)

もう言葉にするのは難しいけど人は正しくなんて生きられないし、正しくない人が作った世界は正しくないし胸糞悪いし価値なんてあるのか疑ってさえしまうほど不完全
そんな世界でどう生きていくのかっていうやっぱり正解のない問いになんとか折り合いをつけるっていう話じゃないのかな〜

この映画見てると間違いのない生き方なんて絶対できないしなにが正解かもわからない。
登場人物全員がどこかしら欠落を抱えていてもがいていて他者や社会と衝突してしまう

俺は石原さとみは同情の余地はめっちゃあるしこういう状況になんてなったことはないから何か言える立場じゃないけどやっぱり言ってることやってることがおかしいと思ったしイライラさせるくらいだった
たぶん夫も同じようなこと思ったんじゃないかな

かといって石原さとみの言動も全く否定できないし彼女の立場になったらあれくらい取り乱すと思う
あと夫の立場になっても俺は何もしてやれないと思うし劇中の夫もいい夫だけど何か役に立てたかというと微妙である

中村倫也の役も素晴らしかった。
彼の役があるから単なるメディア批判の映画にならないで完全な悪でもないし善でもないメディアの仕事に折り合いをつけようとする存在として物語の中のテーマにあってると思う

単純な解決やハッピーエンドにはさせてくれない映画だけど救いのようなものは示してくれる。
この映画を見ることによって狂ったように思える世界や不完全な自分や過去の後悔などどうしようもない思いに対して少し折り合いや赦すことができるんじゃないでしょうか。
そういう意味では希望の映画ともいえる
何はともあれ素晴らしい映画でした
こーよー

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