たわらさん

ミッシングのたわらさんのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.3
前作『空白』と同様に失意に陥る登場人物まわりを描いた作品だが、本作の特徴は事実が確定していないからこそ、希望と絶望の間で宙ぶらりんの状態が続くためとても息苦しい。徐々に現代社会の歪みに溶け込まれていく母親や報道記者であり、過剰なまでに役に演じていく様は不気味である。

"便所の落書き"だとしても時間に触れてくれる人がいることで娘の存在の証明になるのが切なく、事件から2年経った世界ではさらにそれが貴重な水なのかもしれない(徐々に忘れされていく中、父親の開示請求に走る流れが憎い)。歪な社会を構成するのは歪な人間の重ね合わせであり、見渡す限り万物はマトモじゃないんだけど、気持ちが楽になる変化を一歩ずつ進んでいくのが折り合いというものなのかもしれません。

他、印象的なシーン
・警察署での怒号の共鳴
・前面と背景のギャップの画の面白さ
・人が臨界点を超えた時に声帯が出る「ア"──ア"──ア"──」がリアル
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