柏エシディシ

ぼくたちの哲学教室の柏エシディシのレビュー・感想・評価

ぼくたちの哲学教室(2021年製作の映画)
3.0
北アイルランド、ベルファスト。分断を象徴する鉄条網や"平和の壁"が未だ撤去されていない街の公立男子小学校。
「どんな意見にも価値がある」と言うケビン・マカリーヴィー校長は教育の主軸に哲学を据えている。
宗派対立や貧困による犯罪、ドラッグや自殺などの問題と隣り合わせの地区で、相手の言葉に耳を傾け自ら考えることの大切さを根気よく時にユーモアを交えて教え諭していく。
「やられたらやり返せ」と父親から教えられたという子供に、どう私たちは接することが出来るのだろうか?
近年、「カモンカモン」や「ウーマントーキング」の様な"対話"の重要性を捉えた映画が増えている。
分断や偏見が横行する今の時代に本当に求められているもの。
エルビスを愛し、かつては拳で家族を守らなければならなかったと述懐する一見武闘派のケビン校長の知性と深い思慮、ユーモアが魅力的。
心のバランスを崩した男子生徒に寄り添い諭すリール先生も素敵だった。
子供たちの繊細な表情を捉えたカメラも素晴らしい。
ケビン校長も仰られていたが、子供に教える、伝える以上に、一緒に考え、こちらも学んでいくこと。"哲学する"ことを私たち大人こそ本当に必要なことなんだと思う。
柏エシディシ

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