お砂糖

ナショナル・シアター・ライブ「善き人」のお砂糖のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

シャロンスモールさんの演じ分けが素晴らしかった!エリオットリーヴィーさんとの複数の配役もフレキシブルで面白かった。テナントさんの歌唱シーンがあるとは知らず嬉しい驚き。

最初は簡素な舞台セットで、衣装も変わらなければ小道具すらろくに出てこない。序盤は「差別政策は一時的な狂乱だ」と言ったり、なんか事態は遠くで動いておりいまいち現実味を伴わない印象。が、伝令の封書や焚書の本などピンポイントな小道具が登場するにつれて事態も悪くなり、だんだん現実味が増すような気がした。小道具全部は覚えてないけど、もしかしてナチスにまつわるものだけ小道具になってたりするのか??レコードとかも小道具で出しても良さそうなもんだけど、あれはそういう分類だと小道具にはならないのか…と思ったり。どうなんだろう。
2幕後半、いよいよハルダーの衣装がナチスの軍服に変わってからの決定的な暗転のシーンは、音声だけでどんどん凄惨な状況になっていくのがわかって恐ろしかった。明かりがついてからもしばらく字幕に集中できなかった。思い出しても怖い。

セリフで人道的、善き人となんども出てくるが、そもそもが人道的じゃない行為を人道的に遂行する…みたいになってきて、人道的って?善き人って?言葉がだんだん空疎になっていく。

善き人をみてまたこうなり得るんじゃないかと思ってしまうような世の中で嫌だな。
私も、ハルダーみたいな選択をする大勢の「善き人」のうちの一人なんだと思った。「恵まれてる」けど「そこまで親身になれない」。平和は勝手に誰かが作ってくれるものじゃないんだよな…と改めて思いました。

幕間の作者紹介も良かった。
映画が原作と思ってたらもともと舞台だったのは知らなかった。
時たま観客にむかって、かつカメラ目線で語りかける演出はそんな好きじゃなかったけど、そういう演出をしがちな作家だと知って、ならまあいっか!という気になりました。
パンフも参考になりました。
レオポルトシュタットと合わせて見たい作品。
お砂糖

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