脳内を可視化する作品
私たちが小説を読んでいる時に脳内で起きているイメージを高解像度で映像化したような作品。そのように思わせる仕組みが複数ある。
・本の地の文そのままのセリフ(he said...のような)
・物語の多重構造(作家>ヘンリー・シュガー>ヘンリー・シュガーが書斎で見つけた本に登場する医者>奇妙な能力を得た初老の語り)
・鑑賞者に語りかけるような目線(カメラ目線)
・舞台装置のような場面展開(飛び出す絵本のような構成)
このような仕掛けは、本作がフィクションであることを印象付ける一方で、あまりの情報量かつ詳細な描写にリアリティを感じる、という効果が垣間見える。
ロアルド・ダールの様々な作品で同じような作風の短編作品がいくらでも出来そうである。児童書のクラシックを素材にしながら、ウェス作品であるがゆえの新しさがそこにあり、心地よい鑑賞体験だった。