コマミー

私がやりましたのコマミーのレビュー・感想・評価

私がやりました(2023年製作の映画)
3.8
【弱い立場を逆手に】



2023年公開"フランソワ・オゾン"第3作目

「すべてうまくいきますように」「苦い涙」と今年はフランソワ・オゾンの作品が3作も観れるという贅沢な年となった。
3作共に、幅広いオゾン作品のジャンルの中でも比較的作られる事が少ない"喜劇もの"に挑戦した作品であり、"現代社会に対する風刺"がそこかしこに散りばめられてるのが特徴的であった。
そして本作も、"レトロ調"の作品で、少しビリー・ワイルダーの作品を思わせるような作りなのだが、箱を開けてみればかのワインスタイン事件やそこから起こる"MeeToo"の風潮など、現代社会に起きたあらゆる"革新的な出来事を風刺"した作品に仕上がってた。

"なかなか日の目を見ない若い女優"、その"同居人の弁護士"、そして映画創始時代からの"大女優"…この3人の女性はあえて"不利な状況"を逆手に取って、人々の共感を得て、強い立場を手に入れようとしている。
それは"大物プロデューサーの殺害容疑"だ。新人女優"マドレーヌ"は信頼できる同居人の弁護士"ポーリーヌ"の力を借りて、あえてその容疑に乗っかり、自らが置かれている女性ならではの立場の弱さを主張して"女性達の共感を得て"、「悲劇のヒロイン」として"富と名声"を得るのだ。これはまさに、現代で言うMeeTooのようなものだ。まさにこれは逆転の発想で驚いた。こんな事ってあり得るんだ。

だが、そこに"思わぬ来訪者"がやってくる。

大女優"オデット"だ。実はこのオデットは、プロデューサー殺しの真犯人らしく、富と名声は私のものだと主張するのだ。マドレーヌは女優として着々と成功を収めたが、ここから歯車が狂い始める。

まぁ、これはとんでもないミステリー作品だ。一組と1人の女性が「犯人の座」を狙って争うのだから。
だが、裏を描けば、弱い立場を利用して"男性優位社会を制する女性達"の物語なのである。
そしてマドレーヌとポーリーヌの友情を見るに、"フェミニズム映画"としても充分楽しめるし、単純に、クライム・ミステリー・コメディーとしても楽しみながら見る事ができる、かなり映画としては美味しい作品に仕上がってた。オゾンの作品の中では、1番幅広い年層で見れるのではないか?

マドレーヌを演じた"ナディア・テレスキウィッツ"、ポーリーヌを演じた"レベッカ・マルデール"は、今後も注目のフランス女優だなと感じた。この台詞の多さを見事演じきったなと感じた。
"イザベル・ユペール"の演技が今までで1番生き生きしている。本格的なコメディのユペールは、実は今回が初めてなのではないか?オデットの"底意地の悪さ"がめちゃくちゃ表現されてた。

2023年に公開されたオゾンの作品の中で、1番面白い。
レトロなクライム・ミステリーものでありながらも、喜劇風に語られるフェミニズムの台頭を描いた秀作であった。
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