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HOW TO BLOW UPのhasisiのネタバレレビュー・内容・結末

HOW TO BLOW UP(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

監督は、ダニエル・ゴールドハーバー。
脚本は監督と、アリエラ・ベアラー。ジョーダン・ショール。
2022年に公開された犯罪ドラマ映画です。
※アラスジを最後まで。その後に感想を。⚠️

【主な登場人物】🎅🏼💣
[アリーシャ]テオのPTR。
[ショーン]親友。
[ソチトル]主人公。
[テオ]幼馴染で、白血病。
[ドウェイン]カウボーイ。
[マイケル]爆弾制作。
[ローガン]元スポーツ選手。
[ローワン]ローガンのPTR。

【概要からアラスジへ】🏭🚐
ゴールドハーバー監督は、生年月日不明。コロラド州出身の男性。
ハーバード大学卒業のユダヤ人。
2018年に、ウエブサイトの乗っ取りを描いたサイコホラー『カムガール』でデビュー。
今回が2作目です。

原作は、アンドレアス・マルムのノンフィクション『パイプライン爆破法 ー 燃える地球でいかに闘うか』
マルムは、おそらく1977年生まれ。スウェーデン出身の男性。
ルンド大学の准教授。

マルクス主義者。
(資本主義を解体して、社会主義を構築しようと計画する思想)
化石燃料が温暖化の原因だと主張。
2023年の10月に起きた、ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃を称賛している。

気候変動の原因が人間にあり、社会が変われば地球が救われる、の思想に取り憑かれた環境活動家。
ようするに、エコテロリストの旗印であり、暴力革命です。

シー・シェパードに代表されるように、動物保護とも密接に絡んでいるので、ヴィーガンにも言及している。
なぜか肉を食わずに狂暴化する人達。
ヴィーガン=マナーの悪いカルト、で固定化されつつあるので、イメージを回復させるタレントの登場に期待したい。

原作本で語られる思想や活動の歴史。世界各地の状況に、キャラを当てはめて娯楽に仕上げたライトなオリジナル脚本。
ユダヤ人の若手と、ハマス支持者が夢のコラボレーション。

🛢️〈序盤〉⚗️🥽
米国の西部。太平洋岸に面したカリフォルニア州の湾岸都市、ロングビーチ。石油精製工場に隣接した住宅地。
喪服のソチトルは、母の葬儀を行っている。幼馴染のテオも参加している。大気汚染と、気候変動による猛暑に苦しめられた闘病生活だった。

大学の図書室で、仲間たちと会合。友人のショーンも参加している。
化学燃料への投資撤退を働きかける「ダイベストメント・キャンペーン」が効果をあげず。
温暖化による死亡者の増加を憂いている。
ゆるやかではなく、急速な変化のために攻撃を開始したい。
夜の自宅。ショーンと2人での話し合いで、テキサスにあるJDIAの石油精製工場。パイプラインを破壊するアイデアが浮上した。

中西部の北、ノースダコタ州のパシャールは雪に覆われている。
先住民居留地には、石油労働者が暮らす家が建ち並んでいる。マイケルは、サウスカロライナから来た男に因縁をつけて喧嘩に。
自然保護活動の無力さに嫌気がさしていたが。スーパーで働き、日用品を使った即席爆弾の制作にのめり込むように。成長過程を自身のチャンネル「Boom Tok」で配信して。

2023年12月22日。
都市部。フードを被り、周囲を気にするソチトルは、地球を温暖化させるSUVのタイヤを狙っては、ナイフでパンクさせてゆく。ワイパーに黄色いチラシを挟めて。
SUVによるCO2 の排出量の増大と。それが他人にどれだけ壊滅的なダメージを与えているかについて。
移動は年期の入ったシボレーの93年製・シェビーバンで。後部の荷室には袋入りの硝酸アンモニウム20㎏を積んでいる。
停車すると助手席の扉が開き、友人のショーンが合流した。

スーパーで働くマイケルは、倉庫でバックに入れたポリ塩化ビニルのパイプを確認。
ハウスキーパーのアリーシャは豪邸で掃除。監視カメラの日付を改ざんし、24日に掃除していた風に。
その頃、アリーシャの恋人であるテオは自助グループに参加していたが。トイレで嘔吐。末期の白血病患者であり、症状を薬と酒で抑えていた。

ローガンとローワンの若いカップルは、コカインを鼻から吸ってから車で出発。
カウボーイのドウェインは、自宅で家族と夕食前。敬虔なキリスト教信者であり、祈りを捧げる。
夕食後に野外でハンドガンの手入れ。幼い子供を残し、奥さんと別れのキスを交わした。
多種多様な8人は、テキストメッセージで繋がる同士。エコテロリストだった。

南部にあるテキサス州。辺りに何もない砂漠に残された小屋に、ローカップル以外の6人が集合。はじめて顔を合わせる者も多い。
即席のラボを用意し、ドラム缶爆弾2個の制作を開始する。
野外。マイケルは切り株除去剤と、排水管クリーナーをガラス瓶で混ぜ、もう1瓶と口を繋げた。瓶をオイルランプで熱する。ガラスが割れないようにランプを揺らし、混合物をゆっくり蒸留してゆく。
アリーシャは鉄のキャップをハンマーで潰し、爆弾の威力を増加させるための破片を作っている。

遅れてローカップルが到着。硝酸の酸っぱい臭いでLSDを彷彿して興奮している。
ソチトル、ドウェインを含めた4人はバンで出発。
目的地に到着するとスコップで穴を掘る。大人の下半身が埋まる程度の深さまで掘ると、金属の地下パイプにぶち当たった。

テオとアリーシャが、ドラム缶を転がして内容物をかき混ぜている間に。
マイケルとショーンはラボへ。フラスコで硝酸鉛に水をかき混ぜて、硝酸鉛の希薄水溶液をつくる。
さらにアジ化ナトリウムを加え。
分液ロートを使ってゆっくり、アジ化鉛の結晶がフラスコの底に沈殿してゆく。

つぎにショーンは、爆弾の起動装置の制作に。はんだごてを使い、基盤にコードや電池を溶接してゆく。
マイケルは、もっとも危険なアジ化鉛の粉末を雷管へ格納する作業を1人で担当した。
起爆薬である少量のアジ化鉛に点火して、ドラム缶内に密閉された硝酸アンモニウムに誘発させる仕組みだ。

🛢️〈中盤〉🕳️🩼
テキサス州の都市、オデッサ。
白人のドウェインは、先祖から引き継いできた100年の歴史ある土地を守ってきた牧場主。
パイプラインの建造に反対して裁判を行ってきたが敗訴。ドメイン法で土地を奪われるも、立ち退きを拒否。政府に反旗を翻(ひるがえ)していた。
ショーンがドキュメンタリーの撮影現場で知り合い、チームへ勧誘した人物である。

パイプラインを破壊したいが、地上に石油が漏れつづけるのは避けたい。
爆破予定箇所は2つ。いずれもバルブステーションの近くで、石油の流出を阻止できる場所を選んだ。
穴を掘った1ヶ所目から砂漠の丘をのぼり、2マイル離れた位置にある150フィートの高架パイプへ。ここだけ岩盤を回避するためにパイプが地上に顔を覗かせている。

互いの主張をぶつけあう酒盛りを過ごしてからの翌朝。野外でコーヒーと軽食をすませると、8人はバンで出発した。
最初に穴を掘った場所に到着。運搬ベルトを使い、男3人で重いドラム缶を抱え、穴に入った女たちが誘導する。

煩いモーター音で、監視ドローンが付近を飛んでいるのを発見。オイル漏れを検知するためのLiDARスキャナを行っていると推測。
ショーンとローワンが作業を交代。バックル付きの予備の運搬ベルトを振り回して投げる。2回目のスローで撃墜。カウボーイが牛を捕縛する投げ縄の技術だった。

マイケルがドラム缶の蓋を一旦外し、雷管と配線の取り付け作業を慎重に行い。バンは次の目的地へ。
ローカップルだけが、バルブステーションでの作戦のために徒歩で分隊した。

6人は2マイル先の丘に到着。
台座の上。大人の背ほどの高さを通るパイプラインの下までドラム缶を転がし、2本の運搬ベルトの上に設置。パイプとの間にベルトで輪をつくり。4人がかりでベルトを引っ張り、2人が缶を持ち上げる。
力いっぱい引き絞り、少しずつドラム缶を浮かせてゆく。
1回目は、ベルトが切れてドラム缶がアリーシャの右足に落下。複雑骨折するトラブルがあったものの、添え木に縛って応急措置。

5人による2回目の吊り上げは順調に。
パイプの上に乗ったショーンがバックルのハンドルを3、4回反復させてベルトを巻き取って固定。ドラム缶をぴったりパイプラインに密着させて設置するのに成功した。

骨折の痛みに悶絶する、アリーシャにスキットルの酒を提供して心配するテオ。
助からない病気と診断されてからも、ずっと側で支えてくれた大切なパートナーである。
仕事中に倒れたテオが病院で診察を受けた結果が、慢性骨髄性白血病。
医師からは、石油精製工場の近くで育ったのが影響していると言われたのが。
幼馴染であるソチトルの計画に参加を決めた理由だった。

🛢️〈終盤〉💥⛵
爆弾の設置完了の合図を受けたローカップルは興奮。昼間からはじめてしまう。
余韻に浸っていると、トラックがやってきて、石油会社の作業員が2名、付近を探索。茂みに隠れたカップルに聞こえてくる会話から、壊れたドローンの回収が目的らしい。
作業員が爆弾で吹っ飛ばされるとまずいので、彼らの車のタイヤをナイフでパンクさせ。ローガンが囮になって砂漠を走り、2人をひきつける。

カップルはポートランドで活動するエコテロリストである。
ローガンが敵を引きつけている間に、ローワンが出入り口を封鎖した鎖をボルトカッターで切り、バルブステーションに侵入。フラフープサイズの巨大ハンドルを回してバルブを閉め、石油の通過をストップさせた。
作戦完了の合図を確認すると、待機していたマイケルが起爆装置である無線のスイッチを押した。轟音と共に巨大な噴煙が立ち昇り、2ヶ所のパイプラインを同時に吹き飛ばした。

ショーンは近所にある酒場のカウンター席にいた。昼間から酒を飲んでアリバイ作り。
建物が揺れるほどの地響きで、作戦の成功を確信した。
アリーシャは、パートナーと永遠の別れの前にハグ。アリバイ上は仕事中なので、病院へは直行できず。痛みをこらえ、車を運転して地元を目指す。
ローワンに合流したローガンは右上腕を撃たれて負傷していたが、命に別状はなかった。
モーテルで彼氏の腕の弾丸を取り出してから、FBI捜査官に接触した。

夜更け。通報を受けた連邦警察が、8人が爆弾制作を行った小屋に到着。
残って仲間の痕跡を消すよう、掃除していたソチトルとテオは降伏。大人しく逮捕された。

翌日には配信予定されていた動画が観覧可能に。
ソチトルから視聴者に向けて最後のメッセージが。
自分がJDIAの石油パイプラインを爆破した犯人であること。人類を滅亡から救うために、我々はCO2を大量発生させる装置を破壊しなければいけない。
「この戦いは、ごく一部の富裕層の道楽から人類を守るための正当防衛」なのだと。

テオは病院で最後の時を迎え。ソチトルは刑務所に送られたが。
彼女たちのメッセージに感化された集団が夜の港に参上。大金持ちが所有するスーパーヨットに時限爆弾を設置。
世界中に人類救済のためのエコテロリズムの輪が広がってゆく。


【映画を振り返って】🚙🗡️
アンチヒーロー。
悪を駆逐するために、犯罪で対抗する集団を描いてある。
政府や法に訴えても埒(らち)が明かないので、爆破する。

物語性やメッセージ性は極力排除して、テロの準備と実行に没頭する活動家たちを追いかけている。
批評家と比べると、一般の評価が落ちる原因だと思われ。
犯罪ものの古典『レザボア・ドッグス』の影響を受けているのだとか。
モキュメンタリー的な側面が強い。れいのごとく説明が省いてあるので、何が起こっているのか理解するのは難しい。

タイムラインに差し込まれるそれぞれの回想シーン。
さいきん異様に流行っている、おしゃれ編集も影響しているだろう。
ただ、重いテーマのわりに会話は若者同士なので適当。いい意味で頭の悪い庶民の群れであり、最後までサクッと楽しめる。
「まずは見てもらわないと始まらない」
の条件は満たしているで、大儀のために大胆に説明はそぎ落とした、と評価するのが丸いだろう。

📕原作。
勉強大好き人間の知識披露。広く浅く。
グレタ・トゥーンベリや、ガンジーなどの環境活動家の振り返り。
気候変動の原因である企業名や、商品の紹介。
パイプラインの破壊事例など。
デモ参加者の演説を聞かされているよう。

読んでいると作家の考えに感化されるような仕組み。
簡単で大きな効果が得られるのに、エコテロしない理由がないように思えて、映画化せずにいられなかった監督の気持ちが伝わってくる。

👑超富裕層。
・プライベートジェットのCO2の排出量は、民間航空機の約10倍。
・プールなどを完備した、世界に300隻しかないスーパーヨットの年間でのCO2の排出量は約7000トン。
彼らは人類の1%程度だが、世界人口の底辺から3分の2である50億人と同程度を排出している。

🌏人類の未来を救う。
・ヴィーガンには興味ない。
・テロには反対。
だけど、二酸化炭素の排出量を抑えて、地球の温度を下げたいのは確か。
注意したいのは、日本は京都議定書での目標達成。その後はパリ協定に従い、2013年と比較して、2022年時点で19.3%の減少を達成している。
充分な成果をあげているので、変に悩む必要はないです。

いまもなお砂漠化がすすむ某超大国2つの問題であり、
原作者に影響されるならば、世界中に害を撒き散らす石油王の問題です。

テロのような極論には賛同できないけど、学びも多い。
SDGsにまじめに取り組んでいる日本人の影響を受けて世界が変化してくれれば、人類も救われるのですが。
綺麗事では流れを変えられない、なんて過激思想に取り憑かれるのも理解できる。

2020年。米国科学アカデミーでは、
このままだと50年以内に全人類の3分の1が住む地域が、サハラ砂漠と同程度の暑さに晒される、と発表しています。
エコテロリストがもがく気持ちも分かります。
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