dm10forever

HIDARIのdm10foreverのレビュー・感想・評価

HIDARI(2023年製作の映画)
4.2
【木の国】

62355cinema5さんのレビューを拝読して、一気に興味がわいた作品。
なんだか皆さんの評価も軒並み高いし「これ、なんぞ?!」って言う感じで。

や~これは面白いね。
っていうか「カッコいい」
もしかしたらストップモーションアニメで初めて感じた感覚かもね。

普通「ストップモーションアニメ」っていったら、やっぱりクレイアニメ(ピングーやひつじのショーンのような粘土で表現したアニメ)がポピュラーだと思うんですが、やっぱりコマとコマを繋ぐ微調整なんかもそうだろうし、表情なんかの細かい表現にも対応しやすいんだろうね。
粘土特有の柔らかい質感も、観ていてどこか安心感があるし。

というところで、今作のストップモーションは「木」です。
≪江戸時代の伝説的な彫刻職人・左甚五郎を主人公に、甚五郎の作品と同じ木彫りの人形を使って表現したストップモーション≫
これがかなり斬新。

粘土とは真逆といってもいいくらいに、どこか無骨な印象すらある木彫り人形が生き生きと立ち回りを演じます。
甚吾郎に斬られて倒されていく敵から噴出す血を「おがくず」で表現したのはアイデアとしても勿論、ビジュアルとしてもとても美しかった。

また、素材が「木」であることで、粘土よりも表現の幅は狭まりそうなものなんだけど、実際はそんな事はなくて、逆に「木」であることを逆手に取ったかのように、戦いの中で生じる「衝撃」や「痛み」のような感覚も伝わってくるような気がした。

クレイアニメにはクレイアニメの良さがあるし、ウッドアニメ(って呼ぶのか?)にはウッドアニメの良さがあるので、甲乙をつけるようなものではないと思うけど、でもこれは今後ひとつのジャンルとして出てきても面白いんじゃないかな。

それこそ、今回のようなちょっと無骨でハードボイルドなお話を表現するときは、この質感は使えると思う。
例えば「マフィアもの」とか「ホラーもの」とか。
粘土のような柔らかい質感ではなく、どこか無機質な感じの素材の方が表現できるお話もあるよね。
そういった意味では、この作品はお話のテイストにもピッタリマッチしてる。

主人公の左甚五郎さんって、実際に江戸時代初期に活躍した伝説の彫刻職人って言われているんだけど、本当は居なかったとかいう説もあるし、かなりミステリアスな人物でもあるんですね。
で、江戸城改築の際に秘密保持のために殺されかけたっていう逸話もやっぱり本当にあるそうで・・・。

そういう背景を知ってから観ると、なんだか面白さも増してくるような気がしました。




あと・・・・
江戸時代には3回罪を犯した罪人のおでこに「犬」っていう刺青を掘っていたんですってね。
一回目は「一」二回目はそこに斜めの棒を足して「ナ」、そして3回目で「犬」という文字が完成していたそうです。
ある意味、今でもやるべき罰だと思いますけどね。
これがあれば一般市民も警戒できるし。
そもそも懲りずに三回も罪を犯す時点で反省ゼロだし、こういう人はまた同じことを繰り返すと思うので、市民の自衛の意味でも『おでこに「犬」の刺青』を復活させてもらえないかな・・・
いや、結構マジで。
dm10forever

dm10forever