【扱いづらい巨象】
日本に帰ってきた。久しぶりの劇場行きは、気になっていた本作から。
前編同様の味わいだった。特別とは思えない、何なら凡庸な映画なのに、フシギと退屈さがなく惹かれてゆく。物語としては、方向が絞られて来るので前より、わかり易かった。
前編と同じく、“バーフバリへのタミルの回答”と受け取ると、まず一次的には、捉えやすい。
CGやVFXに頼らず、人間頼りであるのが変わらぬパワーで、ベテラン監督らしいかと。人物の魅力を前面に立て、映像のテンションで繋いでゆくから、物語が二の次でも魅せられてしまう。
ただ今回は、女性キャラが後退しちゃったね。ヒロインが段々引っ込むのはインド映画あるあるだし、10世紀が舞台、原作が書かれたのが50年代…という成り立ちからは、仕方なくもあるけれど。
アイシュさんの活躍に期待したが、顔力ばかり発揮して終わっちゃった。美熟女の鑑ではあったけれど。
“象使い”のアイデアは面白かった。あれをちょこっと出すなら、インドという国は扱いづらい巨象だ!…ともっと言い切ってしまえば、映画としてより、太い背骨が通ったような気がする。
戦争映画でありながら、ああいう厭戦感を刻んできたのは、バーフバリより鮮度がある。復讐譚としても、虚しさを立てたのはよかったね。難しいとはわかりつつ、歩み寄ろうとしている映画だった。
タミル地方においては黄金時代だった…的な歴史の捉え方も、現地ではあるのかな?ならもっと、ロマンを語ってもよかったと思うけど。あの後、英国に蹂躙される時代が否応でも、待っているわけだしね。
時計がようやく気になったのは、七割方過ぎた辺りだろうか?もっと整理や強調ができたのでは?とも思うけれど、ベテラン監督の手綱さばきを劇場で味わえて、やっぱり、よかったですよ。
<2024.7.3記>