垂直落下式サミング

卒業五分前 群姦(リンチ)の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

卒業五分前 群姦(リンチ)(1977年製作の映画)
3.7
卒業式は、若者にとって新しい門出の日。繊細な青春の日々の終わりと始まりのなかで、若さゆえにゆれうごく不安と焦燥の一コマを描く。卒業式の前日を舞台とした群像劇ロマンポルノ。
不良な奴等だって、小さな町で顔馴染みだからみんなと普通に喋るくらいには仲いいのとか、育ちの良さそうな男女が、はじめてのラブホセックスするとき童貞処女が空回りしちゃうなど、とっても愛らしい人間模様を写し取っている。
冒頭の女教師レイプのところは、めちゃめちゃドン臭くて、段取り悪くて、数人がかりであっても、本気で嫌がる女性をどうこうすることの大変さがリアルに伝わる。
みるみる皮膚が紅潮して、次第に肌に汗が滲んでいく様子は被虐美満点。輪姦かます度胸はあるけど抑え込もうとするだけで、二三発ぶん殴って言うこと聞かせるほど性根は腐りきっていない。田舎ヤンキーの生態観測として、真実味があってとてもいい。
主人公の男の子はかわいい顔をしているし、同級生たちにも感情移入できてよかった。あんな町で燻ってたら、そりゃあデキの悪い順に不良になるし、エエトコの子にだってそれなりの葛藤がある。恋人と駆け落ちしようとして、若さゆえに引っ込みが付かなくなってしまうところは、親に支配された人生を送るしかない男の悲哀に満ちていた。新しい家庭教師の女に性教育までがんじがらめなのがエッチい!
特によかったのは、変なよそ者のヒモ男と付き合ってる主人公のお姉さん。田舎やさぐれ姉ちゃんの解像度高め。障子と襖に囲まれた畳の部屋の化粧台でタバコの煙を吐き出し、半分塗りかけた口紅が折れる。鏡越しに泣き顔が…。この演出…とてもいい…。
途中までは、いちおう性行為にいたるのがストーリー上の必然があったのに、最後らへんは急にみんな発情して襲いはじめたりして、導入がめっちゃ雑になっちゃってガッカリ…。
本来、作り手が描きたいのは燻る若者たちの焦燥だってことは、なんとなく伝わる。ドラマをしっかりしすぎて、ロマンポルノというジャンルが足枷になってしまった系。
しなくてもいいところでエロりはじめて、しなきゃいけないからしてるんですよって匂わせてくる。こちとら、やっつけ仕事エロりじゃあ満足できない。
日本の田舎を舞台にした若者たちの群像劇としては、なかなか見れる。小椋佳の「さらば青春」が流れるところなど、田舎で燻るものたちのセンチメンタリズムがじーんと伝わってくる。