工藤蘭丸

花腐しの工藤蘭丸のレビュー・感想・評価

花腐し(2023年製作の映画)
4.2
これは最近の日本映画の中では久々に見応えのある傑作でしたね。R18+の作品なので、多少観客を選ぶところもあるとは思うけど、今のところ今年の日本映画ベストワンはほぼ間違いなしかな。

原作は2000年に芥川賞を受賞した小説らしいけど、それを2012年の斜陽のピンク映画業界の話に置き換えて、自分の土俵に持ち込んだのが成功の秘訣だったかも知れませんね。原作は未読だけど、多分に監督自身の体験も反映されているんじゃないかと思えるような内容でした。

現在のシーンをモノクロ、過去をカラーで描いた趣向も、滅びの美が強調されて切なかったし、昭和の香りが漂う音楽もノスタルジックでした。主題歌(?)の『さよならの向う側』は山口百恵のラストシングルだったと思うけど、あらためてじっくり聴くとなかなか良い曲ですね。私も今度カラオケのレパートリーに加えようかな。 w

昔好きだった山崎ハコの歌も出てきたけど、エンドクレジットを見たら出演もしていたようで、韓国スナックのママ役でしたかね。彼女の顔は若い頃のレコードジャケットの写真でしか知らないので、全然気づきませんでした。

私も若い頃、東京に住んでいた頃は、たまにピンク映画を見に行くこともあったもので、特に辛いことなどがあった時などのストレス解消に、何も考えずに見ていられるピンク映画は持ってこいでしたね。

でも、ビデオの普及によって、質の悪いAVなども乱発され、その煽りでピンク映画はすっかり廃れてしまって、今や風前の灯火なのかな。古き佳き時代を知るものにとっては、寂しい限りです。

本作のシュールなラストシーンには色んな解釈が成り立つと思うんだけど、私もまだ消化しきれてなくて、よく分かりませんでしたね。でも、そもそも現実か妄想かよく分からないのが映画であって、その境い目はファジーなままでも問題なしかな。機会があれば原作も読んでみて比べてみたいと思いました。