映画芸術2023年年間ベスト映画(笑)を獲得した荒井晴彦大先生の映画。私は荒井晴彦の映画はそういえば見たことなかったなと思ったので鑑賞。ダラダラしてたら年が明けてしまった。余談だが、2023年の映画芸術のワーストは『怪物』で、「本当にぶれないなこの雑誌は」と思った。
見てビックリしたのが、本作は、終始男2人が昔付き合っていた同じ女についてそうとは知らずに語り合うだけの映画だったこと。この女性というのはピンク映画に出ていた女優で、この2人の男はそれぞれ違う時期に付き合っていた。2人は偶然出会い、酒を飲みながら話に華を咲かす。たったそれだけの映画なのだが、何故だか見てしまえた。
本作の時間軸は3つ。現代、さとうほなみが柄本祐と付き合っていた時代、綾野剛と付き合っていた時代。映画の主観は綾野剛で、さとうほなみの自殺で意気消沈している彼の目線で語られるため、現代は白黒。この諦観には、ピンク映画の衰退、そしてこの国の衰退(経済的にも政治的にも)が重ねられていると思う。過去の時代はちゃんと色がある。彼らが活気があった頃だからだと思う。総じて本作は、ピンク映画の鎮魂歌的な側面がある。
ラストは非常に抽象的な終わり方をするけれど、結局は意気消沈している綾野剛が柄本祐と飲み明かしてさとうほなみを思い出し、また何とか再起を図ろうとする物語だったのかなと思う。それにしても、オッサンの与太話みたいな映画だなと思ったけど。