ジョー

花腐しのジョーのレビュー・感想・評価

花腐し(2023年製作の映画)
3.0
日活ロマンポルノ。言いかえればピンク映画。そこに携わった人たちの暗い情念。
邦画が斜陽産業になり、猫だまし的に出現したピンク映画も衰退していく。その真っ只中で、荒井晴彦監督は、脚本で衰退期の邦画を支えてきたのだ。その彼の掛け値なしの意気地が理解できれば、本作にはじーんとくるものがあり、そうでなければ、ただのどぎつい性描写の映画にすぎない、ということになる。

確かに、彼の前作の「火口のふたり」と比べると、単にピンク映画の最前線で生きてきた人間の、ひとりよがりの想いが強すぎる作品に思える。掛け値なしで、過去の忘れられない女性への思慕も描いている。おそらく柄本拓の脚本家が自分自身がモデルで、綾野剛が、同時代の同じピンク映画を生きた某監督なのだろう。
脚本家と監督が同一人物の女性を愛し、その女性は別の監督と心中し、過去にカラオケで、山口百恵の「さよならの向こう側」を熱唱する。それが何を暗示するのかまでは言及したくない。とにかく東北大震災の頃の話なのに、なぜか映像は違和感なく昭和の情景で充たされていた。

誰だって熱情に宙吊りにされた時代がある。その時代へのレクイエムと呼ぶか呼ばないかはどうでもいいこと。
共同便所の木造アパート、オモニの韓国料理の店、場末のカラオケスナック。場所はどうあれ、酒とたばことセックスにまみれた時代があった。それをどうしても描きたかった。わかるやつに伝わればそれでいい。
少なくとも、ピンク映画の時代を知る私は、その想いに共感できた。それでよしとしたい。
ジョー

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