コマミー

首のコマミーのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.6
【みんなアホで狂ってやがる】





「アウトレイジ最終章」からはや6年は経ち、"北野武"監督の新作はもう見れないものと思っていたのだが、ちょうど一年前だろうか…本作の製作が決定したと聞き、舞うように喜んだものだ。しかしながら私は、「DOLLS」以降の作品はなかなかハマれず、「アウトレイジ」シリーズも正直あまり見れてない。心の中で「いつまでも初期の作品を思い浮かべてはならない」と念を入れてはいるのだが、片隅にはいつもそれを思ってしまう自分がいた。

そしてそんな中、挑んだ"久々の新作"。北野監督が"自身の原作本"を元に作る、北野版"本能寺の変から山崎合戦"はどのようなものになっていたのだろうか?

まず、いきなり否定的な意見で申し訳ないのだが、いろいろ拍子抜けでおかしな所も多い作品になっていた。
まず、"織田信長"と"明智光秀"の"同性愛"の盛り込み方だ。この2人は共に、のちの歴史的な解釈で同性愛者である事が判明している武将だ。北野監督は今の時風らしく、この要素を原作に盛り込み、そして映画でもそれを描いた。しかしながら、これが作風的に結構拍子抜けな描き方になってしまい、「おお、ピッタリじゃねぇか!男同士の愛を入れとけば客の心掴めるんじゃね?」と言う"軽い感覚"で入れた感が強くてシラけてしまった。逆に入れない方が良かったんじゃないかと思ってしまった。
そして、"登場人物の年齢設定"について。北野監督が"秀吉"役で、"小林薫"さんが"家康"の役だと…?秀吉はこの時40後半、家康は30後半なのにこの配役は無理がある。よく昔の人は老けて見えるとは言うが、これは無理があるだろ?北野監督はいくら自分の作品に自分を登場させたいからって、秀吉は可笑しいんじゃねえかとマジレスしてしまった。ごめんなさい🙏

一回落ち着いて、良いところも。
まず演技の面に関しては、"加瀬亮"さんが演じた信長と"中村獅童"さんが演じた"茂助"がとても良かった。
普段柔らかな役が多い加瀬さんがめちゃめちゃ狂気を暴走させている所を見て、とんでもない化け方だなと感じた。演じた後、疲れが半端ないであろう。素晴らしかった。
獅童さんが演じた茂助は、その満面な笑顔と"挙動不審"から、彼から滲み出る隠れた狂気が見えてきて凄かった。茂助は本作の"隠れたサイコパス"だ。だって、自分の友人も手にかけちゃうんだもん。
そして音楽と撮影。音楽は「レッドクリフ」などの"岩代太郎"さん。この方は本当にスペクタクルや歴史物にピッタリな音楽家だなと感じた。"合戦シーン"での音楽はまさに最高だった。撮影は「火天の城」や「利休にたずねよ」などの歴史超大作の撮影を担当してきた大御所:"浜田毅"さん。これも合戦シーンでのカメラアングルが本当に壮大だったので、この2人を起用した北野監督は、その所は半端な気持ちで歴史物に挑んでないなと感じた。

まさに、戦国版アウトレイジと言われざるを得ない作品だが、箇所箇所に織り込まれたコントや変な踊り、そして変なタイミングで流れる同性愛シーンが災いしてモヤモヤする作品だった。それでも、加瀬さんと獅童さんの演技、岩代さんの音楽と浜田さんの撮影技術のおかげでそんなに悪くない作品だったのかなと感じた。
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