ムク

首のムクのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

---
こんなもんじゃねぇか?戦国なんて
---

なーんて言葉を、公開当時に
北野監督は何かしらのインタビューで
言っていたような気がします。

その思いがそのまま映画になったようで、
やりたい事が成せたなら何よりだと思います。

ただ…。

1 群像劇にしても脚本が散らかりすぎている
2 役者の質にバラツキがありすぎる
3 北野武は監督1本で出演すべきでは無かった
4 美術は素晴らしい
5 結果的にLGBTQ表現が時代にマッチ

1 誰にも感情移入出来ずただの台本通りのお芝居かコントを見ているかのような複雑な気持ちになった…特に個人的に、豊臣方の絡みはまるでバカ殿のよう…それが狙いとも取れるがあまりに過剰。

2 評価されるべきはベテラン俳優陣。流石の貫禄と演技力で映像が見事に肉付けされ、イメージするその人物がそのまま蘇ったような感覚を覚えました。特にMVPは間違いなく加瀬亮の信長でしょう…。岸部一徳演じる利休も、あの漫画の利休そのままを見ているようでとてもおもしろかった…。一方でそれ以外の芸人起用や監督自身の出演、またその他の多くの俳優は、残念ながらこの映画に馴染んでいなかった、役になれていなかったと感じました。これは多分、ストーリーや役の難しさ、世界観などを監督と俳優間であまり意思疎通が出来ていなかったのではないかと勝手に想像しました、ギクシャク…。あと、豊臣方のコメディ部分はアドリブと思うくらいコントで、流石に真剣さに欠けていると感じました。そのギャップこそ北野監督の狙いとも思いますが、それにしてもバランスが悪かったように思います。何より、日本の役者の層の薄さを感じざるを得ない…。

3 2に通じるところですが、流石に演技できる体力は残っていないと感じました。素直に監督に専念していれば何か変わったのではないかと勿体なく思います。ただ…エンドロールに豊臣秀吉役で表示されたのは"ビートたけし"でした、北野武ではなく…。これは、思惑通りの作りなのかな…??

4 冒頭の首切り死体に始まり各々の衣装や化粧など、魅力的でインパクトのあるビジュアルが散りばめられていて飽きずに楽しむことが出来ました。このビジュアル面だけでも観る価値はあったかと思います。

5 公開後、何やら噂で聞いていた男色表現。鑑賞を始めるとわりかし激しく全編に散りばめられていて「おっ」となりました。たまたま描きたかったものが時代に合った形になったのだと思いますが、世界観構築のためにも物語の構成的にも必要で面白く感じました。

諸手を挙げて喜ぶことは出来ない、だがしかし意欲作、だと感じました。なんの意味もない印象も残らない、そんな映画ではないなと感じました。

監督の次回作があれば
また観たいと思うくらいには…。
ムク

ムク