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破壊の自然史のきのレビュー・感想・評価

破壊の自然史(2022年製作の映画)
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冒頭、ハーケンクロイツが映っているものの牧歌的で文明以前の暮らしの映像(店先で壁にもたれながら編み物をしている女性ふたりが各々の立ち位置からおしゃべりしているの大好きだった)からとつぜん切り替わる空爆の映像(ハンブルク空爆?)。まるで絵画みたいに美しくもある。美しくもあるその映像の下でいま・まさに起こっていることは記録されないということをあらためて考える。象徴的なシンボルや人物(チャーチル、アーサー・ハリス、ゲッペルスの声など)でなんとなくどちら側というのを判断して映像を見ることができるものの人間=群衆の顔は、イギリス・ドイツとぜんぜん見分けがつかない(し、そのように意図されて英独、ときにアメリカの映像がミックスされているんだろうな)。唯一の正しい方法で戦争を終わらせるという言葉は、ほんとうに正しいのか。後半になるにつれどんどんひどくなっていく惨状(死体の山・赤ちゃんや女性が多いのも当たり前か)、破壊行為がなにを犠牲にするのか。ラストのカラーの映像がよりいっそう色褪せたものに見えてしまい、うしなったものをより際立たせるような演出におもえてくるしい。
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