YasuyukiKimura

キリエのうたのYasuyukiKimuraのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
4.0
岩井俊二が撮るアイナ・ジ・エンド、ハマるだろうなとは思ってたけどめちゃくちゃ良かったですね…。アイナの妖しくて危うい部分もめちゃくちゃ出ててドキドキしてしまった。
ストーリーは想像してたのとはちょっと違ってて、括りで言うとなりたかった姿になれなかった者たちの群像劇になると思うんだけど、そうなってくると殊更アイナ二役じゃない方が良くなかった?とも思うがあっちのアイナも良かったんだよなあ。
一昔前のケータイ小説みたいな運命に翻弄されっぷりや公権力が露悪的に描かれるのもthis is岩井俊二って感じで、やるせのないラスト含めてこんなに作家性の強い作品をこんな大規模で公開していいの?と思ったりしました。
一方で歌がテーマのフィクションの難しさをまざまざと感じてしまって、アニメなら森で歌えば動物たちが集まってくるし、戦場で歌えば敵が感動して戦争が終わったりもするが、終電間際の新宿南口で無名のアイナ・ジ・エンドが歌ってたらどれだけの人が足を止めるかってことですよ。
「なんかすごい力を持ってて人を惹きつける歌」なんて現実には存在しないし、それがどんな歌なら説得力があるのか、っていうのがムズ過ぎるんですよね。『犬王』でグラムロックのような曲を琵琶法師にやらせたのは当時の価値観で明らかに異質なものをぶつけるっていうとこでいうと説得力があったなと思ったりしました。
いろいろ書いたが好きか嫌いかでいうと好きです。
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