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Habib(英題)
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『Habib(英題)』に投稿された感想・評価

2.9
2022年のブノワ・マリアージュ監督作品。彼はブリュッセルのINSAS(国立映画・演劇学校)で映画を学んだ後、新聞社での報道写真家を経て、RTBTのドキュメンタリー番組「ストリップ・ティーズ」のディレクターとなる。さらに自身の会社TRAM33を立ち上げ、アフリカなど外国でもドキュメンタリーの監督をした。彼は1992年にレミー・ベルヴォー、アンドレ・ボンゼル、ブノワ・ポールヴールド監督『ありふれた事件』に出演している。この作品は「ストリップ・ティーズ」のフェイク・ドキュメンタリー的パロディとして作られており、マリアージュはここで自分自身に近いジャーナリスト役で出演している。フィクション映画における真実性に触れた彼は自身の作品においてもフィクションとドキュメンタリーの境界を問題にしており、『ハビブの大冒険』でも俳優が俳優を演じるという現実との近さや、カトリーヌ・ドヌーヴが本人役で登場するなどフィンションに真実性を差し込んでいる。
マリアージュが最初に手がけたフィクション作品は1997年の短編『La Terre n'est pas une poubelle』である。モノクロで撮影されたこの作品はカンヌ国際映画祭やクレルモン=フェラン国際映画祭などで絶賛され、続いて長編デビュー作である『24時間4万回の奇跡(1999)』を撮ることになる。この作品ギネス記録挑戦に取り憑かれた男が息子に対して、24時間でドアを4万回以上開閉するという奇妙な記録に挑戦させる物語で、喜劇と悲劇の混淆、到達困難な目標に向かう主人公、父と子の捩れた愛憎関係などマリアージュ監督の作家性とも言える要素は長編第1作ですでに揃っている。

本作の主人公ハビブ(バスティアン・ウゲット)はモロッコ系移民の家庭で育った俳優だ。彼は舞台や映画での成功を夢見ているが、現実には仕事はほとんどなく、オーディションで与えられるのはほぼエキストラのような小さな役か犯罪者や薬物のディーラーなど「典型的なアラブ人」に限られている。彼の家族は俳優という仕事にあまり理解を示しておらず、特に父親は安定した仕事を持たない息子を心配している。そんな中、聖フランチェスコの生涯を題材にした舞台作品で主役のフランチェスコを演じるチャンスを得る。ハビブ自身は無神論者だがキリスト教の聖人であるこの役は、敬虔なイスラム教の信者である家族には打ち明けることができず、秘密にすることにする。その頃映画でも別の仕事が舞い込むのだが、それは小さい役ながらカトリーヌ・ドヌーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)との共演作だった。この知らせはハビブの住むモロッコ系のコミュニティにも広まる。テロなどでイメージが悪化していた事もあり、区長など政治家はこの機会を利用しようとドヌーヴをレセプションに招こうとするが失敗してしまう。​

仕事のことだけでも混乱しているハビブだが、さらなる試練が降りかかる。モロッコにいた父がアルツハイマーの初期症状の治療のためハビブと同年代の新妻と一緒にブリュッセルに戻ってきたり、横暴でナルシストな舞台監督と仕事上の緊張関係が生まれたりして様々な衝突が生まれる。そんな時にカトリーヌ・ドヌーヴがハビブに言った「自分たち俳優は他者でいることにエネルギーを注ぎすぎている」という言葉を思い返す。フランス映画そのもののような人物が発するその言葉は、家族や仕事で期待に応えることに悩んでいた彼に、自分の人生を自分の人生として受け入れるきっかけを与えることになる。本作でのハビブの「大冒険」とは遠くへ旅立つことでも成功を掴むことでもない。自分が何者であるのかを探し、自分を見つけることこそがこの映画の静かな冒険なのである。