繰り返される規則的な日常の中で起きる些細な変化こそが 主人公ヒラヤマの心を豊かにしてくれる
孤独に生きる彼の姿は
穏やかな生活やその中での些細な変化に幸せを噛み締めつつも
どこか寂しそうにも見える
煩わしい人間関係や社会通念上の常識から開放されて孤独に生きる彼の人生は 決して不幸なものではない
けれども 過去の自分や今の生活を振り返って後悔することは確かにあるとおもう
ただそれは物質的な豊かさへの憧憬や社会的排斥への不安みたい他者との比較から起こる単純な感情ではないのだけれども
おそらく 『自分の人生には誰も残らない』ということ をあらゆる場面で感じてしまい どうしようもなく寂しくなってしまうからだとおもった
彼と対照的で裕福な生活を送る妹や彼に好意的な姪との交流で 自分が置かれていら状況を否応無しに感じてしまったからこそ 最後のシーンで 彼は涙を浮かべているのだとおもう
孤独や寂しさに押し潰されるそうな瞬間があっても それは必ずしも不幸ではなくて
そういう感情があるからこそ 穏やかな日常や日々の微かな変化に幸せを感じる時もある
人間関係が希薄でも 孤独に生きていても 自分の心に誠実に向き合って 積み重ねてきた日々を振り返ることで 人生は豊かになる
そんなことを感じられる作品だった