樋口漱石

PERFECT DAYSの樋口漱石のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.9
ラストシーン3分間のあの表情に誰もが魅せられるのは、平山自身の過去あったであろう暗い陰と、選択してきた生き方が「これで良いのだ」という今の覚悟、これからの未来への希望とが綯い交ぜになり、平山自身が木漏れ日のような美しさを体現しているからだと思った。

人は哀しみや苦しみ、喪失等を経験して、時間をかけて自然体の優しさや思いやりを形成していく生き物だと思う。だんだん陰が濃くなるほどにそこに眩いばかりの光があるように。

その煌めきを表現し切った役所広司は本当に素晴らしい俳優だと改めて感じた。

追記 平山に対して批判的な意見をいくつか目にして感じた事は、どれもニーチェの思想に出てくるルサンチマン(うらみつらみ、嫉妬、復讐心等)から来るものだと思った。

現代はニーチェが予言した通りニヒリズムの時代(絶対的な価値基準、生きる意味や目的が失われた時代)で、何を信じたら良いのか分からない時代なので、結局誰かが作り上げた他人基準の常識に従って生きている人達が大半だと思う。

しかしこのようなニヒリズムの時代だからこそルサンチマンを捨て、自分に正直に世間体や常識に囚われる事なく、自分自身を拠り所(直感や感覚を基準)として生きる強さが重要だと思うし、その象徴が平山という人物なのだろう。

平山の生き方を否定する人は世間に合わせただ生きるだけの「末人」として生きれば良いし、平山のように人生を彩り豊かな美しい人生を生きようと思えば「超人」を目指して日々生きていけば良いだけの事。やはり最後は選択の問題で、どちらに価値観を抱くかは人それぞれだが、平山に憧れるのであれば、「超人」の意味を調べる事から始めるのが賢明だろう。

樋口漱石さんの鑑賞した映画