カカオ

PERFECT DAYSのカカオのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ヴィム・ヴェンダース監督の集大成か

映画と読書が趣味で中年の私にグッと来る。
とても心地の良い作品でした。




渋谷の公衆トイレを清掃する仕事で働く男


決まった時間に目を覚まし、
起きるとすぐに布団を畳む、
歯を磨き、
ヒゲを整え、
盆栽に霧吹きをかける。


作業着に着替えて、
順番に携行品を持ち、
鍵をかけずに出発、
缶コーヒーを飲みながら首都高速を運転、
カセットテープのお気に入りを聴きながら、
東京スカイツリーを眺める。


仕事に対して誇りを持ち、丁寧に仕上げる。


神社の木陰でサンドイッチを食べ、
型の古いカメラで木陰の写真を撮影、


大衆浴場で汗を流し、
地下の安酒場で夕食を済まし、
眠たくなるまで読書に耽る。



かつて大きな責任を求められる職位の世界にいたのだろうか、


過去の異なる世界よりも、
今の世界を優先した決断が窺える。


稼ぎは少なくとも今の仕事に誇りを持ち、
趣味に没頭できる生活サイクルを繰り返す。


そして、
毎朝、早朝の空を楽しみ、
昼間の木漏れ日を楽しむ。









個人的な余談です。


ある時、ふと気付いたこと。
というよりは、
わかっていたことを改めて考えてみる。


一生の残りの時間をかけても、全ての読みたい本を読破できないだろうし、全ての見たい映画作品を見ることはできない。


この作品における主人公の私生活は、誰にも邪魔をされない。趣味に没頭できる生活をひたすら繰り返す。そういう意味では羨ましい。

そう、とても幸福で羨ましい。
だからといって、そんな域に踏み出せない。






いやいや、
平山さんを演じる役所広司はカッコいいからなぁって思ってしまう面も感じてしまう。


きっと平山さんほどオシャレな人は少ないと思えるけど、私が住んでいる大阪の町にもたくさんいる似たような人はいるのだろう。

最低限の生活ができるだけの仕事に就き、一人で自由気ままに暮らす。時折、通天閣を眺めて元気を補給する。


このような言い方をすればカッコイイが、ただのノンダクレばかりのような気もする。








それはそうと、
じっくりと平山さんの本棚や所有しているカセットの銘柄を眺めてみたい。


そして、
渋谷の公衆トイレは、とてもオシャレだ。




小津安二郎にゾッコンの親日家ヴィム・ヴェンダースに感謝しかない。
カカオ

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