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PERFECT DAYSのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.7
Wim Wenders初。

しっとりした映像の中にもアクセントがたくさんあった。
セリフも少ないし、反復だから眠くなりそうなんだけど、眠くはならなかった。

序盤のルーティンの描写は、1回目からすでに、ルーティンを映しますよといった構図で、どこに注目しなければいけないのかがとても明確だった。
長回しでたらたらやるわけではなく、演技演出も含めコンパクトに行動を収めていく。
ルーティンだから、迷いとかためらいとかなく、パリパリと進んでいく日常が心地いい。
彼の性格はなかなかわからないのだが、彼の周りが映し出されていくので、実際に私たちが他人を知る感覚で、彼の人間としての性質を知っていく。

ルーティン2回目以降は、アングルを揃えるところは揃える。変えるところは変えると、明確に分けている。主観よりのカットが多いが、たまに入る客観のカットがそのルーティンのフローをより滑らかに映していく。
さらに、編集でぱんぱんと切っていくので、何度も見せられている感覚よりも、彼が大事にしていることに重点を置いてみれた。

45分をすぎたあたりだろうか。
ルーティンが少し崩れていく。それがこの映画のきっかけになるわけではないのだが、その崩れた時の彼の反応から、彼の好き嫌いが滲みあがってくる。ルーティンを崩すのはいつだって他人。知らない人の時もあるし、知ってる人の時もある。知らない人にルーティンを崩されるのには慣れているのか、対策がしっかりしているから、すぐにでもルーティンに戻れる。だけど、知ってる人にルーティンを崩されるとどうしても感情が揺らぐ。
その人が親密になればなるほど。
Perfect Daysは、ルーティンでリズムを刻み込んだ毎日なのか、ルーティンを崩されながらも感情が揺らぐ1日1日の積み重ねなのだろうか。それとも、一生到達できない理想なのだろうか。

Perfectって実は一番面白くないのかもしれない。
Perfect Daysを求めるんだけど、どうしてもPerfectにはならない。だから人生は辛いし面白い。

木漏れ日って表現は、最後になるまで辿り着かなかったな。
言われて納得するけど、相対して影の描写が深くまで持っていけなかった。
影と木と鏡が象徴的に描かれるんだけど、ドラマタイズされてなくて、見過ごしちゃうところも多かった。無意識で知覚してればいいんだけど、知覚までもいかなかったかも。

小津なんだって。

死が近づいてくるとやっぱ人って焦るんだな。
死が近づくと生が一番色濃くなるんだな。

こういう映画は好き嫌いなんだろうな。
こういう映画好きって言っとけばかっこいいと思ってんだろうな。
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