かおり

PERFECT DAYSのかおりのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

様々考察が出ていると思いますが、そういうのは調べずに、観て思ったことを書いておく。

多重露光みたいな映像が何度も出てきたのは、
木と木の影の重なりがゆらゆらする木漏れ日の瞬間を、それぞれ別世界に生きる人間が瞬間的に重なる愛おしさみたいなのを映像的に示しててるのではないか。

・木漏れ日が綺麗に撮れてる写真を残して、ピントが合ってない写真は捨ててた
・重なれない違う世界に住んでいる人が居ると言っていた(姪っ子に私は?と聞かれて答えをはぐらかした)
・三浦友和と影の重なりは濃くなるか実験して、『色が変わらないなんてことがあってたまるもんか』みたいなことを呟いていた
このあたりから、人と人との世界はどこか繋がってると信じたい、けどそうじゃないのかもしれない(重なった色は変わらない)という真実にどこかで思い至ったから、平山はラストシーンで泣いていたのではないか。
いつもみたいに無理に笑おうとして、でも涙が止まらなかったのではないか。

『PERFECT DAYS』はヴィム・ヴェンダース監督の『パリ、テキサス』とほぼ同じ構成の作品と言っていい。
物語が存在しているように見えるが、本質はその内容には無く、『人と人の交われなさ』をどう映像的に表現するかということに主軸が置かれているように思う。
パリ、テキサスでは共依存に陥った夫婦が一旦夫の失踪により別れて、子供を連れて再会する物語ではある。
『覗き部屋』で働く妻と夫が同じ場所で話をしているのに、どこか心が重ならない、自閉的な主人公を象徴するかのように部屋の仕切りのマジックミラー越しに電話で会話するシーンが映画の本質である。
PERFECT DAYSを観た人、あるいはパリ、テキサスを観た人が、よく登場人物の行動の是非について議論しているのを見かけるが、私はそれは映画のやろうとしていることから視点がズレていると思う。
(鑑賞の仕方や感想は自由ではあるが…)

なんだかエセ映画批評みたいになってしまったので、やわらかい感想も書いておく。
同じ繰り返しのように思える(自ら意図的にそうやって過ごしている)毎日の中で、いつの間にか出会う人、いなくなる人、変わる景色があり、そういうものの一つとして神社のベンチの女性などが登場する。
取り壊された建物の跡を見た人に、ここに何が建ってたか覚えてる?と聞かれた時に、さあ…と首をかしげていたけど、あの女の人もいつの間にかあの神社でランチを食べなくなる日が来るのかもしれない。
こんなのでどうでしょう。
かおり

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