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PERFECT DAYSのmizukiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
ああ、この主人公は、詩人なんだ そう思いました。大事な人が他人の言葉を借りたい時にしか、この人は声を出さない。とても正しい、と思いました。私も、必要だと思った時しか声を発することができない。本当は雑談なんて苦手。本心を交換し合う会話しか、本当はできない。しかし学習により、ぺらぺら意味のないことを述べることもできるようになりました。相手に気まずい思いをさせないという目的があれば、言葉が溢れてきます。その時出てくる言葉一つ一つに意味はない。多弁になってる時の言葉に、価値はない。

世の中のどんな本よりも、友人との日常会話の方が面白いと決まっている。私の友人は、皆表現者だと思っている。本人たちはそのつもりはないかもしれないけど、脳内がとても面白く、出てくる言葉は、詩。主人公が古本屋に通っていた本当の目的は、本を買うことではなく、本を買う度に店主が教えてくれる、個人的な思想だったのだと思います。あの店主は、主人公が本を買いに行く限り、自他共に認める思想家となれる。誰か一人が認めれば、表現者とファンの関係が作れる。一人だけで表現って、難しい。誰か一人見ていれば、自分と、他人がいることで、私と私以外の境界が初めて生まれる。私も、それを作り続けていきたい。些細な表現を拾っていきたい。私は表現をしないと生きられないってわかった。表現を拾っていることを相手に伝えるのも表現が必要だし、とにかく拾うことを繰り返すことで私は表現者で居られる。表現しなくても生きられる人間からは、痛いと笑われてるであろうこともわかってる。でもこっちは死活問題。笑われても、やるんですよ。死んで讃えられるよりも、生きて笑われる(若くして死ねば全員伝説になってしまうからです)。心が痛いけど、ダサい自分を見るのは辛いけど、それも糧にしてやるんだから〜。本当にダサいのは、一生懸命やっている人を笑えてしまう心だから〜。まあ、笑う側の気持ちもわかるけどね〜。自分のこと一番嫌いなのは自分だから。自分のこと一番笑ってるのは自分だから。

お金にするなら、どうでもいいことがいい。なぜならば、表現を汚したくないから。表現をしないと生きられない、かつ、表現を崇高なものだと思っている人間は、表現を純粋に、やりたい時にやりたいようにできる生き方を望む。私は歌が好きだけど、歌手になったら仕事として歌いたくない時もステージに立たなければいけないし、周りの顔色を伺って歌ったりもすると思う。音を楽しむこと(音楽)が、難しくなるかもしれない。表現を汚さないために、生業にはしない。表現のことを考える暇がある、職につく。働く、稼ぐ。そのお金で、表現している人たちを巡礼していく人生。完璧ですね。私もいつか、その境地に行きたいな。すぐそこまできてる、もうちょっと。
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