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PERFECT DAYSのmovilのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

すっごくよかった。

ストーリーがただひたすらに毎日の生活を描いていて、観る人が平山さんの人生を想像したり自分に重ね合わせたりしながら映画に入り込んでいける感じがよかった。

挿入歌がなくてセリフが少ない分、車の中で聞いてる音楽とひとつひとつのセリフが際立ってた。

ニコちゃんの母親がアパートにニコちゃんを迎えにきて、お別れした後に泣くところと、最後に運転しながらフィーリンググッドを聴いていて泣き出す時は、平山さんのこれまでの全ての思いがぶわぁって溢れ出す感じが心を持ってかれて、涙が止まらなかった。

ニコちゃんとお別れする場面で平山が泣いた理由は、いろんな解釈があるかなと思うけど、私の推測では、
過去に平山は、もともと暮らしていた「世界」で辛い経験をした(のか、違和感を持った)から、そこから脱出するために、家族との関係を断ち切った。平山は今、自分が選んだ「世界」にいる。1人で日々を送っている時は、快適だから気持ちが安定しているけど、もともと妹と一緒にいた「世界」との境界線に触れた(妹と会った)時に、平山が自分自身の人生を豊かにするために一緒に過ごすことができない大切な妹(ハグをしたからきっと大切に思っていると思う)に対して、寂しさや苦しさ、ちょっとの申し訳なさみたいな感情をまた感じたり、思い出したりしてしまったからなんじゃないかなと思った。

最後に、平山が泣いたのは、私は、平山が自分が選んできたささやかな幸せを感じられる毎日がほんっとうに幸せだなあって思ってるんじゃないかなと思った。この人生を選ぶまでに、平山はたくさんの辛い経験をしてきたのかな、とか、妹や家族と過ごすことを諦めたり、(そんなに気にしてはないんだと思うけど)トイレの清掃員というだけで差別されちゃうことがあったり、自分に老いを感じたり。こういった不条理さや、どうにもならないような感覚が平山の中には確かにあるんだけど、平山はそれ以上に、自分のルーティンや趣味や、ゆるく繋がっている人たち(スナックや飲みの店員さん、銭湯の人、本屋の店員さんなど)との関係や、木漏れ日を美しいと感じられる豊かで健康な心があるから、きっととっても満足してるんじゃないかなあって思った。
私はこのシーンは幸せで尊い気持ちを感じたと同時に、どうしようもない感情(人生のはかなさや不甲斐なさみたいなものに対する切ない気持ち)も感じて、なんてすごいハイコンテクストな映画なんだろうって思った。私が歳を重ねるにつれて、また視点が変わっていって、違うことを感じるのかなとも思った。

平山さんの毎日の生活もシンプルで美しくて感動した。

役所さんの表情も行動もしぐさも全てがほんとうにうまくてこんなにすごい役者さんなんだって知った。

一緒に観た友達と、これまでの人生のことを語り合って、自分にとってのパーフェクトデイズってどんな?って聞かれて、一緒に考えたり感情をシェアしたりする時間そのものがすごくいい時間だった!!

パーフェクトデイズって心から豊かだなあっていう気持ちの意味だってずっと思ってた。けど、完璧に自分のしたいように過ごしてる平山さんを表している言葉でもあるかなーとかも考えた。
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