Moriuchi

PERFECT DAYSのMoriuchiのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

TOHOシネマズ二条@京都で鑑賞しました。
朝イチの上映回でしたが、格安の水曜日だからか、観客の数は存外に多かったです。
ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演のこの作品。
結論から言うと、評判通りステキな映画でした。
観る人によって、
「わたしはあのシーンが好き」
「おれはこのシーンがいい」
「あそこであの歌は痺れるよな」
等々、いろいろ好みが分かれそうです。
本作を観た者同士で語らえば、あっという間に一時間や二時間は経っちゃうでしょう。
「今度は今度。今は今」
とか、
「何にも変わらないなんて、そんな馬鹿なことあってたまるかよ」
とか印象的なセリフが幾つかありますが、「このシーンのこの言葉」っていうより、終盤に主人公(役所広司)が見せた「動揺」が特に印象に残りました。
というのも、そこまでは「PERFECT」に思えた彼が、飲み屋のママさん(石川さゆり)とその元旦那(三浦友和)が抱擁しているのを目撃したことだけで、すっかり動転してしまい、缶チューハイ(?)でやけ酒するわ、久しぶりに吸った煙草でむせちゃうわ、醜態を晒すシーンです。あれを観て、
「ぜんぜん『PERFECT』ちゃうやん。めっちゃ少年やん」
って感じて、だからこそ余計にこの主人公に親しみを覚えたのです。
酸いも甘いも噛み分けて、成熟の極みを行くかのように見えた初老の男が晒した純情。(いい意味で)中学生レベルの動転と狼狽。それこそ男の(哀しき、あるいは滑稽な、はたまた切実な)リアルという気がします。
そして、事情(ママさんと元旦那の抱擁には深い意味は無いこと)を察した後は、すっかり機嫌を直して、元旦那と影踏みなんかをして戯れてみたり……。こんな「単純なアップダウン」が、実に「男子」なんですよね。自分も(アホな)男だから、ものすごくわかるんです。
ルーティンを守り、淡々と仕事をこなし、静かな日常を送る普段の彼の姿はとても美しいのですが、「好きな人のことで簡単に乱れてしまう」あたりにも、男の(悲喜こもごもの)リアルがあるんですよね。
PERFECT(な人間)じゃないからこそパーフェクト(な人生)なんだ、と……。本当に完全無欠なら、そんなもん面白くもなんともないじゃん、とヴィム・ヴェンダースは言っているのかも知れません。
……ざっくりと語ってしまいましたが、もっともっと語りたい(語るべきことの多い)映画です。
Moriuchi

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