みずけん

PERFECT DAYSのみずけんのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
言葉で説明する映画が大嫌いなので、「あの夏いちばん静かな海」とかの一部を除きほとんど全ての日本映画が見れないわけなんだけど、これは「邦画臭」とは無縁の、非常に繊細で上品な映画だった。

東京でトイレの清掃員をしている役所広司が、仕事終わりに銭湯に行き、布団に入ってフォークナーを読み、カセットでローリング・ストーンズを聴き、週の終わりにフィルムの現像をして、、、という、現代のデジタル社会に抗うような生活を淡々と繰り返していく映画。

突然物語からフェードアウトする登場人物や、生活の様式美や所持品についての細かい描写など、類似点をあげればキリがないくらい村上春樹的な映画だった。

現代社会はデジタル化を通過してデジタルデトックス化のフェーズに入り始めていると思うんだけど、ブームに乗ってアナログ媒体を発売する音楽会社や、レトロな雰囲気を再現した喫茶店みたいなあざとさが全然感じられない辺りはさすがヴィム・ヴェンダース。

似た映画として「パターソン」が挙げられると思うが、あちらとはまた違ったポエトリックさがあるというか、日常と、その対極にあるなにか奇妙な異世界・精神世界のようなものの気配が見え隠れする、案外湿り気のある作品だと感じた。
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