とっても贅沢な映画体験だった。
中年、独身、トイレの清掃員の毎日という、一見華やかには見えない生活が、不思議なことに至極素敵に見えてくる。
植物の手入れ、行き帰りのカセット、仕事終わりの銭湯、浅草の酒場、寝る前の読書、現像した写真の選別、週一の楽しみであるスナック、そして毎日のトイレ清掃。彼は、今の日本人の誰よりも、「今」を生きているように思えた。
そして予告の時点では皮肉にも思えた「パーフェクトデイズ」という言葉が、最後の運転シーンを観る頃には説得力を持って輝く。
高校でスマホを手に入れて以来、森羅万象に気を傾けることがとてつもなく減った。中学の頃より、物では満たされているのに、心はそんなに満たされていないような気がする。そんなモヤモヤを抱えていた私に深く刺さる作品だった。
次に東京に行く際は、あの銭湯と酒場に足を運んでみたい。そして完璧な人生とは何か、ゆっくり考えてみたい。
